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- 投資家が求めるビル管理コストのベンチマーク -適正な管理仕様に基づくコスト評価のために
■見出し
1. ビル管理コストの不透明性
2. ビル管理コストの評価基準とその検討
3. 管理コストの評価基準算出の試み
■introduction
現在、JREIT(不動産投資信託)や私募ファンドなどに資金が流入し、不動産投資市場が急拡大している。一方、オフィス賃料は長期の低下傾向から脱せずにいる。景気は回復局面にあるとはいえ、オフィス需給バランスからみて、オフィス賃料の大幅な上昇は当面期待できないと思われる。
このような状況下、キャッシュフロー改善を求める不動産投資家はコスト削減に注目し、特に、経常的なオフィスビル管理コスト(以下「管理コスト」という)の制御を図ろうとしている。
なぜなら、管理コストは、税金や修繕費、保険料、減価償却費などのコスト項目の中で大きな割合を占め、投資家の裁量余地も大きいためである。また、ビル管理業務は、これまで投資家やオーナーの系列会社になかば自動的に委ねられ、管理内容やコスト構造の抜本的な見直しにほとんど手がつけてこられなかった分野だけにその削減効果も大きい。
不動産流動化や証券化で、所有権が第三者の投資家に替わった際、競争入札で管理体制が見直されるケースが多いのはこのような事情からである。
しかし、管理コストには、適正な管理仕様(管理サービスの対象である管理項目と、人員配置を含めたサービスの頻度やグレードなどの設定)と適正な原価に基づく価格水準が存在することが、多くの投資家にまだ十分理解されていない。
管理コストは、通常、重層的な外注契約の見直しや管理会社の合理化努力によってある程度削減可能だが、適正な管理水準を放棄することで、非常に安価に抑えることもできる。
流動化された不動産の中には、必要以上に管理コストを圧縮して目先の良好なパフォーマンスを確保していると思われる事例も見うけられる。しかし、このような物件は、かえってテナントの退去やビルの老朽化を招き、結果として資産価値が低下するリスクが大きいことを投資家は認識すべきである。
実は、管理コストには不透明な部分が多く、ビル管理の現場に精通していない投資家にとってはブラックボックスといってよい。
その理由は、第一に、これまで管理コストの詳細な内訳(管理仕様や管理項目ごとのコストなど)が投資家に提供されてこなかったためである。投資家への情報開示が進んでいるJREITでも、開示資料からは管理コスト(建物管理委託費、管理業務費、外注委託費、外注管理費など)の総額しか把握できない。
第二に、管理コストの区分や定義が標準化されていない。実際、ビル管理会社から投資家やアセット・マネージャー、融資担当者などに提供される情報は、管理項目の名称や区分がまちまちなため、他物件と簡単に比較できない。
第三に、そもそも管理コストの原価が不明確である。管理コストは、管理仕様と管理項目単価を基に原価計算できるが、通常、管理仕様が明示されない上に、管理項目の区分がばらばらで、その単価や根拠が不明な場合が多い。
このような理由から、投資家やアセット・マネージャーが管理コストを削減しようとする場合、競争入札によって管理コスト総額が最も安価な管理会社に業務委託することが多い。また、既存ビルの管理会社にコスト削減を指示する場合でも、管理仕様や管理項目ごとの分析・評価を行わず、全管理項目の一律削減を指示することがある。しかし、こうした安易な削減方法では、管理の質を低下させるリスクが大きい。
もちろん、これまで厳しい競争にさらされてこなかったビル管理会社が、管理の質を維持しつつコスト削減できるよう、一層の合理化に取組むべきであるのはいうまでもない。
(2004年03月19日「不動産投資レポート」)
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