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制度改正による勤労者世帯の税・社会保障負担の動向

篠原 哲
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- 昨年12月には、2004年度の税制改革および年金改革の大枠が決定したが、家計への負担増が色濃い内容となった。このような制度改正による税と年金保険料の負担増は、依然として厳しい雇用・所得環境が続くなか、勤労者世帯の可処分所得を下押しし、更なる消費の低迷を引き起こす要因になりかねない。
- 本稿では、今後予定されている税・社会保障制度の改正が、勤労者世帯にどのような影響を与えるかを、世帯・年収階層別の負担増を把握することで検証を行った。社会保険料控除を通じた税と社会保障負担の相互作用があるため、世帯ごとの制度改正の影響について、本稿では単純に個々の改正による負担増加額を積み上げるだけでなく、社会保険料控除や、社会保険料徴収における総報酬制への移行などによる影響も踏まえた検証を実施している。また、所得税においては源泉徴収と年末調整が存在することや、住民税は徴収が翌年の6月~翌々年の5月であることなど、制度改正の影響が表れる時期は非常に複雑であるため、年間ベースの負担増加額のみではなく、徴収のタイミングを踏まえたうえでの勤労者世帯に対する影響も検証している。
- 今回の制度改正は配偶者の収入の有無や世帯主の年収などにより、家計への影響が大きく異なることが指摘できる。勤労者世帯に対する制度改正の影響としては、2003から2004年にかけての負担の変化ついては、配偶者特別控除の廃止により、主に年収約1231万円以内の専業主婦世帯を中心に所得税負担は増加するも、社会保険料の総報酬制への移行や、社会保険料控除の影響により、住民税と社会保険料も合わせた総合的な負担増は軽微なものにとどまる。逆に配偶者特別控除廃止の影響を受けない世帯の負担は減少することになる。
- 2004年後半には厚生年金保険料の引き上げが実施されると見込まれることや、配偶者特別控除廃止の影響が年末調整で表面化することもあり、制度改正の影響は2004年末を機に顕在化していく。2005年入り後は4月に雇用保険料引き上げの実施が予定されていることに加え、6月以降には配偶者特別控除廃止の影響が住民税に現れることもあり、総じて勤労者世帯の負担は前年比で増加に転じる可能性が高い。
- 今後、家計の税・社会保障負担が増加していくことは避けらず、度重なる制度改正の実施が、可処分所得を下押しし、家計のマインドや消費支出を停滞させてしまうリスクは、長期にわたり存在することになるだろう。
(2004年01月01日「経済調査レポート」)
篠原 哲
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