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介護保険制度については、2005年の制度改正に向けた議論が活発化している。これまで介護保険財政面からの検証、要介護者の状況や介護の質の検証といったことが行われてきているが、今後の介護保険制度の改正を検討する上で、あるいは在宅介護のあり方を探る上では、在宅で介護を行う「家族」の視点から、在宅介護の状況や家計の状況、あるいは生活意識を把握することも必要であると考える。
本稿では、弊社において実施しているライフコースパネル調査のデータを用いて、こうした在宅介護と家計・意識の状況を把握している。
具体的には、各世帯の介護の現状を把握した上で、家庭において介護を行うことで、当該世帯にどのような変化が起こるのかについて、要介護者のいる世帯といない世帯の同一時点での比較および各世帯の時系列比較を行った。次に、介護が、家族の生活満足度あるいは生活不安にどのような変動をもたらすのかについて、他の生活要素(収入の変動、健康状態の変化、など)を考慮しながら、その影響の程度を明らかにすることを試みた。
分析の結果、明らかになった点を整理すると下記のようになる。
1.
同居の要介護者と主な介護者の属性をみると、同居要介護者は調査対象者の実母が半数近くを占め、主な介護者は妻が7割以上となっている。「夫の母親を妻が介護する」といったステレオタイプな構図は依然として主流であると考えられる。介護者の変動をみると、主な介護者は調査時点を通じてあまり変動しておらず、介護負担が特定の家族(妻)に集中している。
2.
家計の収支については、要介護者のいる世帯の方が相対的に低収入となっている。消費支出総額では要介護者の有無による差異はみられないが、要介護者のいる世帯では医療介護関係支出がかさんでおり、他の費目の支出を圧迫している可能性がある。
3.
99年と01年の調査時点で継続して介護している世帯においては、この間に「家族の対立」に関する不安度が減少した世帯が多い。介護保険のみの効果であるとは言い切れないが、高齢者介護の制度基盤が提供されることで、家族介護へのしわ寄せによる人間関係の軋轢に対する不安が軽減されたと考えることもできる。
4.
介護状況の変動が生活満足度や生活不安度に与える影響については、有意な結果は得られなかった。但し、99年からの2年間の変動においては、回帰式自体は有意とはならなかったものの、「介護状態の家族ができること」が、不安を低下させる可能性が示唆された。同居家族の中に要介護者ができることは、不安が現実に転化することを意味しており、結果的に不安感の低下といった効果をもたらしていると考えられる。
(2003年11月25日「ニッセイ基礎研所報」)
小野 信夫
井上 智紀
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