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- グループ連結経営の進展とその促進要因に関する実証分析
1.
2000年3月期からの連結決算中心への会計制度の変更などから、企業のグループ経営に変化が生じていると言われている。本稿は、会計制度の変更などを機に、
(1)グループ経営の中身に変化が生じたのか
(2)変化が生じたのであれば何が主要な原因だったのか
という点について定量的分析を試みる。
2.
第1の点については、次の3つの事実から、グループ価値の最大化を目指す「グループ連結経営」を志向する動きが強まったと判断される。一つは、親会社と子会社との損益乖離の解消である。東証第一部上場企業について、親会社および子会社の赤字企業の割合をみると、98年度以前は子会社の赤字企業割合は親会社を大きく上回っていたが、99年度以降は急速に乖離が解消している。二つめは子会社数の減少である。子会社を減らすことは社内的な摩擦・抵抗などから実行が難しいが、連結決算中心主義への移行後、子会社数を減少させる企業のウェイトが高まっている。最後に、Exitルールの設定やグループ組織再編といった、大規模なグループ戦略見直しの動きを指摘することができる。
3.
第2の点については、東証第一部上場企業(約1,000社)を対象に、1995年度、1998年度、2001年度という調査年度を設け、次のような5種類の分析を行った。いずれの分析についても、グループ連結経営を推進した企業は数値1、そうでない企業は数値0で表示される。
(1)子会社損益が黒字の企業を1、赤字の企業を0とするプロビット分析
(2)「親会社損益が黒字、子会社損益が赤字」という企業を0、それ以外の企業を1とするプロビット分析
(3)1995年度(or 1998年度)の子会社損益が赤字の企業を対象に、2001年度の子会社損益が黒字転換した場合には1、赤字のままであれば0とするプロビット分析
(4)1995年度(or 1998年度)と2001年度の両年度について、子会社損益が黒字の企業を1、赤字の企業を0とするプロビット分析
(5)1995年度(or 1998年度)に「親会社損益が黒字、子会社損益が赤字」という企業を対象に、この損益状況から脱却した場合には1、脱却しなかった場合には0というプロビット分析
説明変数としては、上位10大株主、経営者、金融機関、外国人投資家の持株比率という「コーポレート・ガバナンス構造」、連結自己資本比率に示されると考えられる「グループ経営を推進せざるを得ないという経営の逼迫度」を用いた。
4.
分析の主たる結論は次のとおりである。
(1)上位10大株主比率は、1995年度から1998年にかけてプラスの影響が強まったものの、その後は、連結決算を重視し始めた一般株主の投資行動の変化などから2001年度にかけてその影響を弱めたと判断される。
(2)経営者持株比率が高く親会社の経営者の影響力が強いことは、グループ連結経営の推進にとってマイナスの影響を持つが、その影響の強さは1995年度~2001年度にかけて変化しなかったと考えられる。ただし、1998年度時点でグループ連結経営への取り組みが遅れていた企業をみると、経営者の持株比率が高いことは、1998年度からのグループ連結経営の推進に対してマイナスの影響を与えたとみられる。
(3)金融機関は、1995年度および1998年度の時点でグループ連結経営を推進させる役割を果たしてきたが、2001年度になり企業業績の悪化が深刻となる中で、グループ連結経営への取り組みの遅れた企業を中心に、グループ再編を含めたリストラをより強く企業に働きかけた可能性がある。
(4)外国人投資家は、グループ連結経営の推進にほとんど影響を与えていない。
(5)グループ連結経営を促進せざるをえないという経営の逼迫度については、有意なプラスの影響が観測された。経営の効率化が差し迫った経営課題にならないと、グループ連結経営が進められない傾向のあることが明らかとなった。
(2003年09月25日「ニッセイ基礎研所報」)
小本 恵照
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