2001年01月25日

市場リスク・信用リスク統合評価モデル

田中 周二

室町 幸雄

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金融機関に限らず、企業は多くの金融資産からなるポートフォリオを抱えているが、それらは、市場リスク、信用リスク、流動性リスク、オペレーショナルリスクなどのさまざまなリスクに絶えずさらされている。このような金融リスクの定量的評価は、1988年の第一次BIS規制によってその重要性が意識され始め、まずは市場リスク、そして信用リスクの順に評価モデルが開発されてきた。しかし、これまではリスクの種類ごとに評価を行うだけで、複数のリスクの統合評価は行われてこなかった。というのは、リスクを統合評価するための基礎理論が確立されていなかったからである。最近、Kijima and Muromachi〔29〕は、市場リスク(金利リスク)と信用リスクを統合評価するための一般的なフレームワークを提案した。本稿では、彼らのフレームワークを拡張して、金利リスクだけでなく株価変動リスクや為替リスクも含めた市場リスクと信用リスクを統合評価するためのフレームワークについて解説する。
このフレームワークの基礎となるのは、金利とデフォルト確率の将来変動を示す確率微分方程式である。それらの基礎方式をもとに将来のシナリオをモンテカルロ法で発生させ、さらに無裁定評価理論を用いて各資産ごとに将来価値を求め、その総和としてポートフォリオの将来価値を得る。このフレームワークに基づくモデルの主な特徴としては、金利やデフォルト確率の相関を考慮せきること、モデルの理論価格が市場価格と整合的であること、デフォルト確率の期間構造を反映できること、などが挙げられる。出力として、ポートフォリオや個別資産の将来価値分布が具体的に得られるので、任意のリスク指標(標準偏差、VaR、T-VaRなど)を計算することができる。また、期待収益率も得られるので、整合的なリスク・リターン分析も可能である。さらに、ポートフォリオの最適化に用いることもできる。
このフレームワークに従えば、基礎方程式を取り替えるだけで、さまざまなタイプのモデルを得ることができる。本稿では、計算負荷の軽いガウス型モデルによる出力結果を簡単に示す。

(2001年01月25日「ニッセイ基礎研所報」)

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