1999年12月25日

求められるマネーサプライの増加

櫨(はじ) 浩一

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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1.
急務となっている高齢社会に向けた改革に早期に着手し、米国経済の減速の恐れに対応するためには、相当のコストを覚悟してでも急いで景気の問題を解決する必要がある。
2.
物価の下落基調が金融政策の効果を弱め、資産価格の大幅な下落を招いて不良債権問題の解決を困難にしている。マネーサプライの伸びを高めることができれば物価の下落基調は改善することができるはずで、問題は具体的な手段である。
3.
企業と家計がフローの所得に比べストックの負債が過大というバランスシート問題を抱えている現状では、金融機関の貸出しと企業・家計の借入の拡大という通常想定されるルートを通じてマネーサプライが増加することは難しく、また望ましいことでもない。
4.
量的金融緩和論で主張されている手段の中で効果があると考えられるものは、本来は財政政策の範疇に属するものである。
5.
マネーサプライの伸びを高め物価の下落基調を止めるという量的金融緩和論の考え方は正しいが、現在の日本の経済状態では、拡張的な財政政策と金融政策があいまってはじめてマネーサプライの伸びを高めることが可能となる。
6.
下落基調にある物価上昇率をプラスに戻すという政策は目的以上に高い物価上昇を招く恐れが大きい。これが引き起こす問題に備えるために、準備預金制度の改善、インフレ連動債の発行などが検討されるべきであろう。

(1999年12月25日「ニッセイ基礎研所報」)

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