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- 情報化と都市構造の変化 -ネットワーク時代の新たな都市像-
1.
政治、経済、文化等、都市で営まれる様々な都市活動は従来の都市圏域を越えて、脱地域化(deregionalization)を進めている。その促進要因の一つが情報化である。都市活動の役割や活動範囲は、従来は地元、周辺地域、さらに後背地との関わりで決まってくる部分が大きかったが、今はむしろ地理的には遥かに離れた国内外の大都市や地域等との関わりによって決まる部分が増えている。本論はこれからの都市化プロセスや都市構造に影響を与える新たな要因として情報化に着目し、日本の都市へのインパクト、そして現在どんな変化が起きているのか考察し、今後日本の都市システムをどのように整備していくべきか提言を試みる。
2.
光ファイバー網、CATV網、衛星通信網などを中心に情報基盤整備は80年代後半以降急速に進んでいる。流通情報量も特にISDN、インターネットなどの電気通信系メディアに依るものがこの10年間に飛躍的に増加している。その間、情報発信地として東京の役割が一層強まっているが、一方で各種情報へのアクセシビリティの地域間格差は減少している。主要な情報発信地は少数に限定される傾向にあるが、全国どこでも同じ情報を入手出来る状況になりつつある。都市活動の従来の集中-分散パターンに変化をもたらす可能性が出て来ている。
3.
昼夜間人口比の変化から全国の都市の拠点性の変化を見ると、拠点性を高める都市群(東京都政令指定都市)と低下させる都市群の2極化傾向が見られる。都市間の機能的連携の進展と共に、都市ネットワーク拠点が少数に淘汰される傾向が認められる。また、情報関連サービスの立地傾向を見ると、やはり拠点性の高い都市を中心に立地してきている。この拠点都市の地理的分布とそれを支える情報関連サービスの立地は今後の都市システムの構造を決めて行く基本的な特性の一つと考えられる。
4.
日本の一極集中構造の頂点に位置していた東京の66年から91年までの機能的な変化を見ると、過去25年間に東京都区部と他地域との間では(1)都区部の中枢管理機能およびその関連業務機能と、(2)周辺部や他地域に立地する製造業、(3)周辺部の近郊都市に立地する住民生活関連サービスへの機能的分化と空間的分離が進展している。東京のこの動きは必ずしも東京のみに特有の傾向ではない。ニューヨークでも同様な機能的変化が起きている。これは、情報化時代の拠点都市としての役割を強めている巨大都市の一般的な機能的変化と言えよう。
5.
日本の都市システムは今までの一極集中メカニズムとは異なるネットワーク化のメカニズムとも呼ぶべき力が強まっている。その特徴として、(1)都市・地域間の機能的相互依存・競合が進展、その結果各都市は運命共同体的傾向を強めている。(2)一見矛盾した動き、各都市および地域間の機能的な統合化の動きとある一定の都市圏域で自立的なまとまりを形成する局地化の動きが同時に進行している。(3)地域構造の多元化が進んでいる、こと等が挙げられる。
6.
情報化時代の都市システムは、多極分散型というよりも、(1)一層少数の都市へ集中する中心地機能、(2)都市圏内および都市圏外へ分散していく機能、(3)都市圏内の住民生活関連サービス機能の3者が有機的にネットワークされ、個々の都市と都市システム全体の双方が円滑に機能するものである必要がある。それ以外のものは機能しなくなる可能性が高い。個と全体、双方が円滑に機能しないと共倒れになる危険性も増えている。オープン・システム(都市システム)の中で個々の都市が独自の役割を形成することが都市経営そして地域振興の鍵である。
7.
地域人口の減少や高齢化の進展、経済活動のグルーバル化などの中で、地域の情報化施策への期待は大きい。しかし、現実に整備された地域情報システムは、地域ごと、分野ごと、省庁ごとにばらばらに整備されたため、経済活動の広域化や広域行政、住民の多様な行政ニーズ等への対応が困難となっている。個々の都市・地域が日本全体とともに活性化するためには、クローズドであった情報・通信システムをよりオープンなものに変え、それぞれの地域、それぞれの分野の情報が有機的に結ばれ、全ての人にとって情報へのアクセスが保証されることが重要である。
(1997年09月25日「ニッセイ基礎研所報」)
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