1995年12月01日

債券先物市場の特色と課題~5年国債先物取引の展望~

竹内 秀典

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<要旨>

  1. 債券先物取引がスタートして10年経過した。1990年以降、現物と先物間の価格連動性が高まり、裁定が働くことにより、債券市場はかなり効率的になってきた。
  2. 安定した裁定関係を背景に、先物の売り手が現渡し決済に用いる「最割安銘柄」のポジションを、先物の決済日まで、先物と短期金融資産(コール)を使って複製できる。また、国債インデックスに連動するポジションを先物により実現可能である。
  3. 10年国債先物で現渡し決済される建玉残高は、最割安銘柄の発行高と比較して高水準であるが、最割安銘柄の価格が若干割高になっても、それほど異常な変動は観察されなかった。
  4. 受渡適格銘柄(10年国債先物の場合、残存期間7~11年の上場国債)の受渡非適格銘柄と比べた割高感は、1992年以降消滅したようである。また、先物が投資戦略の多様性をもたらし、受渡適格銘柄ゾーンの金利裁定が的確に働くようになり、国債市場の全体的な裁定関係が整備されてきた。
  5. 年明けにも導入が予定されている5年国債先物取引は、残存期間5年前後の現物債券流通量も多いため、成功するであろう。それにより、中期ゾーンの国債や長期ゾーンとの金利裁定の効率化が期待される。
  6. ただし、債券市場はじめ金利関連市場には、信用リスクに対する認識、貸し債市場の付利制限、社債の決済制度、有価証券取引税など、世界に適用する市場として変身を遂げるには、依然として改善すべき問題が残っている。

(1995年12月01日「調査月報」)

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