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- 大阪市のオフィス市場動向 -借手市場の長期化と求められる新たな事業展開-
1994年06月01日
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<要旨>
- 経済のソフト化・サービス化による産業構造の変化がオフィス需要を増加させ、東京都区部や大阪市内など全国の大都市を中心にオフィスピルの集積をもたらした。
大阪市のオフィス市場規模は、オフィス人口とオフィスストックの床面積の推移をみると1980年代以降おおむね順調に拡大を続けてきたといえる。しかし、賃貸オフィス市場について需給バランスを示す空室率と新規賃料の推移をみると、1980年代後半から続いていた貸手市場が崩れ、1992年には借手市場へ移行していることがわかる。 - 大阪市のオフィス市場を東京と比較すると、市場規模とともにオフィス需要特性にも大きな違いがみられる。例えば、支店経済性やソフト化・サービス化度、国際化度である。バブル崩壊後の現在でも、東京では企業の本社機能を中心に広範な地域間でのオフィス移転が目立つが、大阪市では近傍移転や支店などでのオフィス床面積の縮小が目立つ。このように、両市場は、市場規模の差だけでなく、産業構造や都市構造に基づくオフィス需要の質的な差も大きいと考えられる。
- 最近のオフィス市場動向を踏まえ、2000年までの賃貸オフィス市場について4つのシナリオで需給推計を行った結果、2000年の空室率が、最も高いケースで8.9%、最も低いケースで0%となった。
この推計結果を基に、大板市のオフィス市場特性などもあわせ総合的に判断すると、空室率は今後1995~96年にかけて8~10%まで上昇すると考えられる。1996~97年以降は、関西新空港の開港効果により需要が大幅に回復し、一方でオフィス供給が抑制されるため、空室率は低下に向かいビル事業環境は改善する可能性が高い。
また、現在下落傾向にあるオフィス賃料は、空室率がピークに達する1995~96年以前に下げ止まる可能性が高い。 - 今後のビル事業においては、既存ビルの入居率を高めるなど在庫調整による事業効率向上が最大の課題となる。また、21世紀を視野に入れ今後計画されるビル事業においては、オフィス需要の高度化に対応したオフィス企画や、新たな成長産業に注目した多様なピル事業展開が求められる。
特に、新産業の施設需要を取り込んでいくためには、商業ビルやアミューズメン卜分野への進出、ビルの分譲など、事務所用途にこだわらない、賃貸事業のみにとらわれない事業戦略が必要である。また、低廉な床供給による企業育成など先行投資的な試みも期待される。
(1994年06月01日「調査月報」)
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