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- 大都市圏工業の構造変化とまちづくり -日産座間工場閉鎖が意味すること-
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<要旨>
- バブル経済が崩壊し事業の再構築(リストラ)を行う企業が多い中、今年2月、日産座間工場の閉鎖計画が発表され、大きな波紋を呼んだ。このような大都市圏の加工組立型の大規模工場の移転や閉鎖は、その跡地利用のポテンシャルが高いために今後のまちづくりに与える影響は大きいと考えられる。
- 東京圏の工業は工場数、従業者数、製造品出荷額等その比重を東京都区部から周辺都市へ移してきた。しかし、昭和60年以降、周辺都市でも従業者数、製造品出荷額の対全国シェアは低下している。周辺都市には加工組立型の業種が多いが、近年これらの工場では生産機能の再配置や、研究開発機能への質的転換が進んでいる。また、東京圏の敷地出荷額(単位敷地面積当りの製造品出荷額)は全国平均に比して高いが、大都市圏の地価水準との乖離は大きく、生産機能の存立は一層厳しい状況にある。従来、大都市圏近郊に立地適性が高いとされてきた加工組立型工場もこの大きな構造変化の中にある。
- 東京圏の3万m2以上の大規模工場は件数の上では1割程度であるが、敷地面積では全体の7割以上を占め、東京圏の土地利用にも大きな影響を持っている。業種では電気機械、一般機械、輸送用機械等の加工組立型工場が多いが、その敷地出荷額は、東京圏平均より2割程度低く、将来的には移転の可能性は大きい。東京圏の大規模工場の移転先は東京圏外が多く、跡地は集合住宅やオフィスビルに利用される場合が多い。最近では周辺都市の大規模工場跡地でビジネスパーク開発の事例もみられる。
- このような大規模な工場の移転は、周辺都市の地域経済や市の税収に大きな影響を与える。特に就業の場の喪失は昼夜間人口比の低下を招き、都市の自立性そのものを低下させることになる。
- 東京問題の要因のひとつとして経済圏の拡大による職住とのミスマッチがあり、生活大国の実現のためにも職住バランスのとれた都市構造が求められる。そのためには、周辺都市の大規模な工場跡地の土地利用は、就業機会の創出を基本方向と考えるべきであろう。オフィスを中心とした業務系開発は、本来かなり立地限定的な要素が強く、バブル経済の崩壊した今、事業採算性の確保も難しくなっている。
- 大きな産業構造の変化の中で、経済波及効果や雇用創出効果の大きいエ業の育成は、わが国の産業の空洞化を来さないためにも極めて重要な課題である。大都市圏周辺都市の大規模な工場跡地は、その立地ポテンシャルを最大限に活かして、次世代を担う新たな産業の苗床として活用することが望まれる。
(1993年07月01日「調査月報」)
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