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- ‘91年主要国経済見通し
1991年01月01日
<要旨>
ドイツ経済~‘91年の旧西独の経済は、両独統合という特殊要因から非常な高成長を遂げた'90年より成長率は鈍化しよう。
(景気の現状)
- '89年後半の東欧の自由化以降、移民の大量流入による影響等から内需が刺激され、景気は力強い拡大を続けている。ドイツ連銀は景気過熱によるインフレ懸念から金融引き締め政策をやや強化している。
('91年の見通し)
- ‘91年の旧西独経済は、引き続き内需を中心に好調に推移するものの、両独統合という特殊要因から非常な高成長を遂げた'90年より成長率は鈍化し、3%程度の経済成長となろう。
- GNP項目の内訳をみると
~個人消費は、(1)可処分所得の伸びの低下、(2)インフレ率の上昇―等により、伸び率は低下しよう。
~設備投資は、(1)高金利の影響、(2)大型投資の一巡、(3)製造業、金融・保険業等を中心とした設備投資の旧東独地域へのシフト―等から、伸び率は低下しよう。
~建設投資は、(1)高金利の影響、(2)建設費の上昇、地価の上昇―等から、伸びは鈍化しよう。 - 経常収支については、輸入が内需の拡大により増加する一方、輪出は、(1)輸出余力の低下、(2)主要貿易相手国の景気減速―等から減少し、黒字は引き続き減少傾向を辿ろう。
- ドイツ公共部門の財政赤字は'91年には1,400億マルクに達する見込みであり、金利上昇懸念があるが、長期金利が9%の水準から大幅に上昇する可能性は小さいと予想される。
イギリス経済~景気後退は'91年前半まで続くが、民間消費、政府消費等が景気の下支えとなり、‘91年後半には徐々に回復に向かおう。
(景気の現状)
- '88年半ばからの金融引き締め政策の影響等から、企業部門を中心に景気低迷が続いている。
('91年の見通し)
- 個人消費及び政府消費が景気の下支えとなり、景気後退は短期的なものにとどまろう。景気は'91年上半期にボトム・アウ卜した後、同年後半には徐々に回復に向かおう。
- GDP項目の内訳をみると
~個人消費は、可処分所得の減少から、伸び率は低下しよう。
~政府消費は、総選挙前には拡大する傾向があり、'91年にも総選挙が予想されていることから、今後も景気の下支え要因となろう。
~固定投資は、(1)国内需要の低迷、(2)海外景気の鈍化に伴う輸出の伸びの低下、(3)企業のリセッション懸念―等から、設備投資が低迷し、往宅投資の回復にも時間を要することから、'90年に続きマイナスの伸びとなろう。 - 経常収支については、内需鈍化による輸入の落ち込みから引き続き改善傾向を辿ろう。
- インフレ率は、(1)金融緩和に伴う住宅金利支払い額の低下、(2)'90年4月に導入された人頭税の影響の剥落、(3)労働需給の緩和による労働コストの低下―等から低下しよう。
カナダ経済~個人消費、設備投資の低迷から、景気は減速傾向を持続するものの、'91年後半には金融緩和の効果も期待でき、一層の鈍化は避けられよう。
(景気の現状)
- '90年のカナダ経済は、引き続く金融引き締め政策の影響により、内需が鈍化傾向となり、米国の景気減速、カナダドル高による輸出競争力の低下等から輸出も低迷した。年半ばより金融当局は若干金利を下げてきているものの、依然、物価上昇圧力は根強く、基本的には高金利政策が続けられている。
('91年の見通し)
- '91年は個人消費や設備投資の低迷が持続することから、景気の減速も続こう。年後半には金融緩和の影響もあり、一層の成長率の鈍化は避けられるものの、'91年の実質GDP成長率は'90年を下回ろう。
- インフレについては、景気の減速傾向が持続する中、上昇率は鈍化してきでいるが、(1)'91年1月より導入予定の財・サービス税による物価上昇が見込まれること、(2)賃金上昇率が依然高い伸びを持続すること、等により消費者物価上昇率は'90年を上回ろう。
- 中央銀行は景気減速の動向を勘案しながら、徐々に金融緩和を目指すものの基本的には高金利政策の範囲内とならざるを得ないと考えられる。為替については、金利が徐々に低下するものの、円滑な資本流入確保の点からも米加金利差がある程度維持されるため、カナダドルが大きく下げていくことはなかろう。
オーストラリア経済~'90年初来の金融緩和により、景気は緩やかな回復基調をたどろう。
(景気の現状)
- '89/90年度のオーストラリア経済は、'89年の金融引き締め政策により、内需が2.9%の拡大と'88/89年度の8.1%から減速した。
- 物価については、景気減速の中、上昇率は緩やかなものとなってきている。
('90/91年度の見通し)
- '90年年初以来の金融緩和により、景気は、‘91年1-3月期からの回復が見込まれよう。
- '90年11月再審議された賃金協定は、消費者物価上昇率の伸び鈍化を背景に、当初の合意水準から、若干下方修正(6%台)された。年度末の消費者物価上昇率はやや鈍化して、5.8%となろう。
- 貿易収支は、赤字幅が縮小傾向となっており、貿易外収支について、サービス収支の赤字が減少する一方、利子配当収支の赤字が引き続き拡大すると見込まれるものの、'90/91年度の経常収支赤字幅はやや縮小しよう。
- 金融緩和、輸出商品(石炭、鉄鉱石、小麦等)市況の低調、等を背景に、豪ドルは'91年末にかけ弱含みで推移すると見込まれる。/span>
(1991年01月01日「調査月報」)
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