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- 日韓新時代の幕開けにあたって
韓国の蘆泰愚大統領の来日を機にして、日韓関係における長いわだかまりも天皇陛下を始め海部総理のお詫びの言葉によって、氷解の動きがみられ、日韓新時代の到来が言われるようになったことは誠に喜ばしいことである。
私自身について言えは、昔ソウルで日韓平和条約の批准書交換、同条約に伴う行政協定の締結に立ち会った者として、今背の感に堪えない。日韓平和条約の批准書交換によって戦後初めて、日の丸の旗をなびかせてソウルの街を行進した時、大半の韓国人は目をそむけ、背を向けた。あの冷たい雰囲気を思うと、色々の曲折はあったが、遥かな道のりを辿り、関係改善がよく進んだものと思う。
カリフォルニア大学のスカラピーノ教授は前から、日本人は中国を尊敬し韓国をやや軽くみがちであるが、中国人は日本を軽くみており、韓国人は日本に対して愛憎半ばする複雑な感情を抱いているのを知っているかと言っていたが、同教授の指摘は今日も的を射ているようである。又、シュミット元西独首相は、日本はアジアに友人を持たない国だと以前から言っていたが、最近の新聞によるとシンガポールのリークアンユー首相は、彼の言を引用しながら、更にそれに輸をかけて、日本は孤立化し疎外された国になっており、日本人はもう一度誰にも好かれていないことに気付くだろうと言っている。
私自身、海外経済協力基金総裁としてのアジア諸国とのつながりを振り返ってみると、これらの言はかなり誇張があり、日本も段々友人を持つようになっており、事態は改善していると思われるが、最近の日本企業の異常な勢いでの進出、あるいは現地事情を無視した経営がアジア各地で摩擦を引き起こしているのをみると、我々はもう一度こうした外国の人々からみた日本人批判について思いを新たにする必要があろう。
韓国の人々の反日感情も、日本だけの事情、考え方というものを無理矢埋に押しつけようとしたことへの反発であることを考えれば、我々はさなきだに富裕な国民になって、嫉妬を呼び起こしやすい状況にあることもよく認識して、太平洋戦争時代の過ち、昨今の直接投資の在り方等への十分な反省を行う必要があるのではなかろうか。
幸い隣国韓国との間の新しい一歩を踏み出したことでもあり、我が国がアジアの古い友人との間に、親愛と協力の強い絆を綯うべく、心を新たにして真剣に努力する時に来ていると思われる。
(1990年07月01日「調査月報」)
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