1989年11月01日

経済の動き

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<概況>

米国経済は緩やかな景気減速状況となっている。インフレは天井感が強まっているが、経済指標の中には景気の底固さを示すものも見受けられ、FRBは慎重なスタンスを続けている。

一方日本経済は、個人消費と設備投資を原動力に順調な景気拡大がつづいている。'89年4-6月期の実質GNP成長率は、前期比0.8%減、年率3.1%減となった。1-3月期の年率9.6%成長から1年振りのマイナス成長に転じたのは、個人消費が消費税実施前の駆け込み需要の反動で前期比1.3%減と、'86年10-12月期以来のマイナスに転じたのが主因である。

ただ、消費税の影響を除いた成長率は、堅調な推移を辿っており、景気の拡大傾向は当面続こう。

国内需要は、堅調な動きを示している。個人消費は、基調として堅調に推移している。設備投資は、製造業が増勢を続け、非製造業は着実に増加するなど、増勢を続けている。また、住宅建設は高い水準で推移している。

鉱工業生産は、8月前月比2.9%増加するなど引き続き増加傾向にある。企業収益は、更に一段と増加しており、企業の業況判断も、さらに良好感を強めている。

日銀短観('89年8月調査)によると、先行き今年度下期にかけての主要企業・製造業の売上げ計画は、輸出については、やや慎重な見方となっているが、内需の増勢持続から、引き続き着実な増加が見込まれており、収益も増益基調持続が予測されている。

こうした状況下、今年度の設備投資計画はさらに上積みが図られ、前年度に続き2割を越える増加となっている。

雇用情勢は、7月の完全失業率が2.2%と依然低い水準を持続している。さらに、有効求人倍率が7月1.35倍で前月を0.01%上回る等、引き締まり基調となっており、企業の人手不足感は拡がりがみられる。

一方、物価環境をみると8月の国内卸売物価は前月比0.1%上昇したのに対し、輸出物価が同0.4%下落、輸入物価が同0.3%下落したため総合卸売物価は前月比横這いとなった。

また、消費者物価は6月の前月比0.1%下落に続き、7月同0.2%下落した。また、8月の東京都区部消費者物価(中旬、速報値)も同0.3%下落した。景気堅調に伴う製品・労働需給の引き締まり、為替円安推移等の状況を踏まえると依然物価上昇圧力はあるものの、安定基調を持続していると言えよう。

貿易動向についてみると、通関輸出(数量ベース)は、8月前月比6.5%増で、品目では一般機械等が増加している。

通関輸入(同)は、8月前月比12.8%増となった。原油輸入価格(CIFベース)は、8月1バーレル17.2ドルと前月に比べ0.3ドル低下した。最近数ヵ月の動きを品目別にみると、鉱物性燃料、原材料等が増加している。

(1989年11月01日「調査月報」)

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