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日本の経済規模が拡大し、世界的になっていくのに応じて、日本及び日本人が、企業を含めて、国際化してゆかねばならないとよく言われる。この場合の国際化は、特殊な使い方をされている。普通、国際的な観念としての国際化は、特定の港を自由港にするとか、国内の列車通過を認める等の、外国の要求に応じて主権の一部を放棄することを意味する。日本で言う国際化とは、そのようには使われず、日本の経済活動の世界化に対応して、充分な態勢ができていないので、その準備をしなければならないという趣旨で考えられているようである。
しかしながら、ただ単に、片言の外国語がしゃべれるとか、外国の品物を身につける、着こなすとかいうのは、所謂国際化にとって全く本筋を離れた議論であって、今、日本にとって必要な国際化とは、日本人が国際的な舞台で活動する時に、日本人の考え方とは何かを言い、また、それが外国の人によくわかるように振る舞うことであり、そのためには、自分自身の行動において、何故、何のために、どのような方法で、というようなことを、他人に明確に説明でき、また納得させうることが必須であろう。そうなると、日本の従来のやり方であった、なあなあで、阿吽の呼吸で物事が決まるとか、自分の考えを持たず周囲との調和のみを図る自主性の無さとかは、日本人社会に埋没していた時はそれでよいが、異なった文化、宗教、考え方の人達に日本のやり方を理解させる場合には役に立たず、逆に問題となろう。まず、自分自身の行動、考え方の核を持つことにより、外国の人にもこれが日本人だとわかってもらうことこそ肝要ではなかろうか。また、そのような努力をすることにより、外国の人々に対する理解も一層深まると思われる。
奇妙なことなのだが、日本が国際化していくということは、日本人が自分の行動、考え方等について筋がきちんと通っているかを反省してゆく過程となっている。大勢の外国人を雇用していながら、日本人マネージャーがその考えを伝えられないというのでは、そもそも日本の海外進出はナンセンスということになろう。異なった文化、宗教、考え方の人達に伍して、日本が発展してゆかねばならないとするならば、こういうことは日本人でないとわからないとか、日本独特の情緒の世界の話だとかという言い訳は通らなくなると考えたほうがよいであろう。
外国の事物や文化をなでまわして、それを知っていることや使っていることが国際化の証というのは、大きな間違いであり、自己の行動、考えを論理的に外国の人達Kに明し理解してもらうことこそ、国際国家日本の始まりであり、現在のような他国との交流が急速にかつ複合的に進む時代においては、まず第一に実行すべきことではなかろうか。
(1989年04月01日「調査月報」)
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