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- 消費増税の低所得者対策~軽減税率と給付付き税額控除~
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■要旨
○ 社会保障・税一体改革の低所得者対策として検討されてきた軽減税率と給付付き税額控除を、3つの側面((1)低所得者対策としての有効性、(2)制度設計上の問題、(3)納税事務負担の問題)で比較し、制度的には給付付き税額控除が望ましいといわれる理由を整理した。
○ しかし、政治的には、増税に対する「国民の理解」を得るために軽減税率が選ばれた。
○ 世界では軽減税率の問題点が数々指摘されているにも関わらず、欧州では古くから軽減税率を導入し続けている国が多い。これには一度導入すると止めることが難しいことが関係している。こうした欧州の反省を踏まえ、軽減税率を敬遠する国も増えてきている。
○ 軽減税率導入に向け、これから品目選定の議論が始まる。品目ごとに軽減税率を適用した場合に要する財源規模を推計した。食料の軽減税率を8%にすると1.2兆円、5%にすると3.1兆円に跳ね上がる。また、食料でも外食と酒類を贅沢品として除けば約9000億円まで抑えることができる。また、この代替財源を消費税だけで確保すると、標準税率を10.6%に上げる必要がある。
○ 逆進性の緩和に効果がある品目を確認した。単純に低所得者と中高所得者の負担率格差を縮小するのであれば、食料、教養娯楽、光熱・水道の順に良いことが分かった。また、財源1単位当たりの効果が大きい品目は光熱・水道、保健医療、食料の順であった。
○ 給付付き税額控除が望ましいとはいえ、軽減税率は動き始めている。品目の選定には財源の制約、分かりやすさ、中立性(特定品目優遇の議論)、逆進性の緩和という観点を考慮に入れ、より良い制度を確立してもらいたい。
○ 巨額の財政赤字を抱える日本にとっては、少ない財源で効果的な低所得者対策ができる給付付き税額控除が必要だ。諸外国ではカナダのように軽減税率と給付付き税額控除を両立している国もある。将来的に2つの制度を共存させることを考慮に入れ、低所得者対策の議論を進めてもらいたい。
(2014年02月28日「基礎研レポート」)

03-3512-1780
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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