2017年07月07日

少子化の中で存在感を増し始めた外国人居住者の住宅需要ー東京都では増加世帯数の3割を占める

ニッセイ基礎研REPORT(冊子版) 2017年7月号

竹内 一雅

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数年前までは、外国人が居住できる住宅を探すのにとても苦労しているという話しをしばしば耳にしたものだ。しかし現在では、大手の賃貸住宅サイトにはほぼ必ず外国人向けの特設ページがあり、外国人向けの賃貸に注力する不動産会社も登場するなど環境は大きく変化し始めている。

その背景として、日本人人口が減少する中で、外国人人口が増加していることがあるだろう。2015年10月からの一年間に日本人の人口は▲30万人の減少だったが、外国人は+14万人の増加と、日本人の人口減少の半分を外国人の増加が補った[図表1]。
図表1:国内の日本人・外国人別人口増加数
現時点では、住宅需要に直結する世帯数については、日本人世帯も増加を続けているが、増加数に占める外国人世帯の比率は着実に拡大している。2015年の一年間に全国で増加した+54万世帯のうち、外国人のみの世帯及び複数国籍世帯(日本人と外国人の複数国籍世帯、以下同じ)は+10万世帯で、増加数の18%を占め、前年の11%から大幅な上昇となった。

こうした状況は、外国人の2割が居住する東京都でも同様だ。東京都では2016年に増加した人口(+11万5千人の増加)の33%を外国人が占めている。都内の世帯数は2016年に全体で+10万世帯増加したが、外国人のみ及び複数国籍世帯は+2万9千世帯の増加で世帯増加数の約3割を占めた[図表2]。全国で最も外国人人口の多い市区町村である新宿区では、世帯増加数の60%を外国人のみ及び複数国籍世帯が占め、豊島区ではこの比率が64%に達している。
図表2:東京都の日本人・外国人別世帯増加数
では、外国人はどのような住宅に居住しているのだろうか。国勢調査によると、外国人のいる世帯の66%が賃貸住宅に居住しており、日本人を含む全体の賃貸住宅居住比率が37%であることと比べ、賃貸住宅への居住比率が高くなっている。外国人の賃貸住宅というと、東京都心の広い高級賃貸マンションを思い浮かべる方が多いかもしれないが、実際は外国人は日本人を含めた全体と比べて狭い部屋に居住している比率がわずかながら高い。

国内の外国人労働者数は2012年からの4年間で59%の増加となり、同期間に外国人留学生は48%の増加だった。人手不足や政府による高度外国人人材の受け入れ方針などもあり、各国からの外国人労働者や外国人留学生が急増しているからだ。その中でも、近年、特に増加率が高いのがベトナムとネパールからの労働者と留学生で、在留外国人の国籍別にみてもベトナムとネパール国籍の増加が際立っている。

外国人人口が増加しているとはいえ、総人口に占める外国人の比率は、全国で1.5%(2016年10月時点)、東京都で3.6%(2017年1月時点)、比率の高い新宿区でも12.2%にすぎない。しかし、外国人人口の増加は急速だ。国内の外国人は若年層の人口が多いため、特に20歳代で外国人比率の増加が顕著となっている。例えば新宿区では20~24歳人口の35%が外国人で、15~19歳や25~29歳も23%に達し、その比率は毎年高まっている。

今後、日本人の人口減少と少子高齢化や経済のグローバル化の中で、外国人の人口と雇用はさらに増加し、住宅需要(特に賃貸住宅)に占める外国人比率はますます高まると思われる。こうした動向は東京だけでなく、大都市を中心に各地に広がる可能性が高いだろう。不動産事業者や住宅オーナーにとっては、外国語対応をはじめとする外国人向けサービスの充実を図り、増加する外国人需要を取り込むことが、これからの住宅事業での生き残りと事業拡大に大きく貢献することになるかもしれない。
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竹内 一雅

研究・専門分野

(2017年07月07日「基礎研マンスリー」)

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