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- 宿泊者数の減少で感じる、活況が続くホテル市場への若干の懸念
また、最近の国内ホテル需要の増加を下支えしてきた外国人の延べ宿泊者数も、熊本地震以前の2-3月頃から増加ペース(前年比)が低下している。これは、訪日外国人旅行者数の伸び率の縮小と、外国人一人当たりの宿泊日数の低下に現れている。訪日外国人旅行者数の増加率の縮小には、円高の進行に加え、ビザ緩和や消費税免税措置、首都圏空港の発着枠の増加等の政策による押上げ効果の一巡や、中国による関税制度改革に伴う「爆買い」目的の訪日旅行需要の縮小なども影響があるかもしれない。
外国人一人当たりの宿泊日数(延べ宿泊者数/訪日外国人数)は、2015年6月には3.34日だったが、本年6月には3.05日まで低下している。これにより、外国人の延べ宿泊者数の増加率(4-6月は前年比△8.6%)は、訪日外国人旅行者数の増加率(同△19.0%)を大きく下回った(図表2)。国内での宿泊施設不足や宿泊費の高騰による滞在日数減少の可能性とともに、国内宿泊を伴わないクルーズ船の増加や、統計では把握できない低価格の民泊への宿泊需要の流出もあったと思われる2。
2020年の東京五輪開催に向けて、政府が2020年の訪日外国人旅行者数の目標を4千万人に設定したこともあり、現在、ホテル市場では多くの開発計画が進行している。週刊ホテルレストランによると、ホテルの新・増設計画は2015年6月時点の3万1千室から、2016年6月には5万2千室まで増加している(完成時期未定含む)4。こうした投資の動きは、最近の宿泊需要の増加とホテル収益の改善が今後も続くと考えてのことだ。
2016年に入り、日本人延べ宿泊者数の減少や外国人の増加率の減少など、熊本地震の影響だけではない変調の兆しが見られる。活発なホテル開発が続く中で、こうした変調が短期的な傾向で終わるのかなどを把握するために、日本人の宿泊動向はもちろん、外国人の訪日客数や宿泊動向に加え、今後のホテル市場の需給関係に影響を与える可能性がある民泊の法制化の動向にも注視が必要と思われる。
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竹内 一雅
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(2016年09月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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