2016年03月01日

年金改革ウォッチ 2016年3月号~ポイント解説:財政見通しの検証(ピアレビュー)

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   中嶋 邦夫

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■要旨

1 ―― 先月までの動き
年金部会では、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の改革について、議論の整理がまとめられました。この整理をもとに、改革案が今国会に提出される見込みです。また年金数理部会では、平成26年度公的年金制度の財政検証(ピアレビュー)結果について、報告書がまとめられました。

2 ―――ポイント解説:財政見通しの検証(ピアレビュー)
社会保障審議会年金数理部会は、2月8日に、厚生労働省等が2014年に作成した年金財政の将来見通しに対する検証(ピアレビュー)結果を示しました。本稿では、その概要と課題を確認します。
 1|今回の特徴:財政見通しの作成過程に注目。国民年金財政の検証も明示。
 2|財政見通しへの評価:一定の好評価をしながら、課題も指摘。
 3|レビューの課題:検討中の制度改正への関与

1 ――― 先月までの動き


 

1 ――― 先月までの動き

年金部会では、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の改革について、議論の整理がまとめられました。この整理をもとに、改革案が今国会に提出される見込みです。また年金数理部会では、平成26年度公的年金制度の財政検証(ピアレビュー)結果について、報告書がまとめられました。
 
○社会保障審議会 年金部会
2月2日(第36回)テーマ 年金積立金の管理運用に係る法人について
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000111237.html    (配布資料)
 
2月8日(第37回)テーマ 年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方、年金積立金の管理運用に係る法人の運用の在り方
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000111893.html    (配布資料)
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000111940.html    (議論の整理)
 
○社会保障審議会 年金事業管理部会
2月8日(第21回) テーマ 日本年金機構の中期目標・中期計画の変更及び平成28年度の策定、障害年金制度の運用に関する対応状況、その他
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000111922.html    (配布資料)
 
2月29日(第22回) テーマ 日本年金機構の中期計画の変更及び平成28年度計画の策定、障害年金制度の運用に関する対応状況、その他
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000113123.html    (開催案内)
 
○社会保障審議会 年金数理部会
2月8日(第68回) テーマ 平成26年財政検証・財政再計算に基づく公的年金制度の財政検証(レビュー)、その他
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000111737.html    (配布資料)
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000112819.html    (報告書)
 

2 ――― ポイント解説:財政見通しの検証(ピアレビュー)

2 ――― ポイント解説:財政見通しの検証(ピアレビュー)

社会保障審議会年金数理部会は、2月8日に、厚生労働省等が2014年に作成した年金財政の将来見通しに対する検証(ピアレビュー*1)結果を示しました。本稿では、その概要と課題を確認します。

1|今回の特徴:財政見通しの作成過程に注目。国民年金財政の検証の必要性も明示。
図表1 レビュー結果(報告書)の構成 今回のレビュー結果(報告書)の構成をみると、財政見通しの作成過程に注目しているのが、まず目をひきます。厚生労働省に資料を求める場面では、実施体制について詳細な資料の再提出を求めるなど、市民の目線を意識したやり取りが行われていました。
また、国民年金を検証する理由を冒頭で明示した点も注目されます。そもそもこのレビューは被用者年金の一元化に関する閣議決定に基づいて開始されたため、過去のレビューでは国民年金の扱いが付随的でした。今回は、被用者年金の財政が国民年金財政の影響を受ける点を根拠に挙げ、被用者年金一元化後も国民年金の検証が必要なことを示しています。
図表2 レビューの主な結果 2|財政見通しへの評価:一定の好評価をしながら、課題も指摘。
レビューでは、被用者年金一元化の実現や、将来見通しが幅を持った前提で作成された点を好評価しています。一方で、今後に向けた課題指摘は、最後にまとめられた提言以外にも、随所で行われています。特に、国民年金財政への適切な対応やマクロ経済スライドの終了を判定できない懸念など、年金制度や財政見通しの結果に対する指摘は重要です。

3|レビューへの期待:検討中の制度改正への関与
レビューでは、制度改正に向けた試算の実施を好評価していますが、試算の内容は深く分析していません。例えば、財政見通しで経済変動が考慮された点を評価していますが、制度改正に向けて論点となった、実質賃金上昇率がマイナスとなるケースが含まれなかった点は指摘していません。他の点でも、検討中の制度改正への影響を避けた懸念があります。
以前は制度改正を反映した財政見通しが作成されていましたが、現在は財政見通しの作成後に制度改正が議論されます。制度改正の進め方の変化に応じて年金数理部会の役割を見直し、事後検証だけでなく検討中の改正への数理面での関与が期待されます。
 
 
*1 ピアレビュー(peer review)とは、同分野の専門家による外部評価(英語では学術論文の査読も指します)。年金数理部会による財政見通しの検証は、これまで「財政検証」と呼ばれてきましたが、厚生労働省が作成する財政見通しも2009年から財政検証と呼ばれているため、今回は「財政検証(ピアレビュー)」と表記されています。以下の本稿では、単にレビューと表記します。

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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度

(2016年03月01日「基礎研レター」)

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