コラム
2009年04月01日

子供向け死亡保険の見直しの動向

保険研究部 上席研究員   小林 雅史

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3月26日の日本経済新聞で、「子供向け死亡保険の見直し」が大きく報道された。大手生保は15歳未満の子供を対象とする新規契約一件あたりの保険金額上限を一千万円に引き下げ、中堅生保の一部は15歳未満を対象とする保険販売自体を、加入時のチェックにコストがかかり、採算が合わないと判断してとりやめる等との対応を行うとのことである。

その趣旨は、新聞報道のとおり、保険金目的の事件から未成年者を守り、保険商品の悪用に歯止めをかけることにあるが、若干これまでの経緯を振り返ってみたい。

2008年6月に公布された改正保険法は、法制審議会保険法部会で調査・審議されたが、「未成年者の保険加入」についても、諸外国での立法による未成年者の保険加入の制限の状況や、モラルリスクへの懸念等から、一定の保険金額を超える契約を無効とする旨の規律を設けることの必要性・当否について検討が行われ、2007年8月に公表された「保険法の見直しに関する中間試案」においては、他人を被保険者とする死亡保険契約の被保険者の同意についての注記として、「被保険者が未成年者等の制限行為能力者である場合の規律の在り方については、なお検討する」とされていた。

この中間報告はパブリックコメントに付されたが、保険法によって未成年者の保険金額の上限を定めることについて、上記の未成年者殺害による保険金詐取リスク(まさにこの当時、2007年7月に検挙された栃木県さくら市のK容疑者の妻に対する保険金殺人事件の関連で、拘留中のK容疑者が8月に自殺する中で、7歳の妻の連れ子に約8000万円の共済等がかけられて2004年に事故死していたのは不審であり、当局が捜査中との報道がされていた)のほか、現在の子供に対する保障の状況、消費者のニーズ等さまざまな立場から賛否両論があり、結果として、保険法の中では未成年者の保険金額の制限を行わないこととなった。

法制審議会保険法部会で審議された保険法改正への対応に関して、保険会社に対する監督規制の観点から、金融審議会でも議論が行われたが、その中でも「未成年者の死亡保険」について検討が行われた。

検討の結果、未成年者の死亡保険についてはモラルリスク性の高いものがあるため、2008年12月の内閣府令の改正により、被保険者が15歳未満である死亡保険(被保険者の同意がない死亡保険を含む)の引受けを行う場合には、死亡保険の不正な利用を防止し、被保険者を保護するために、引受限度額その他引受けに関する社内規定の整備が保険会社に義務付けられた。

あわせて、金融庁の保険会社向けの総合的な監督指針の改正により、生命保険協会・損害保険協会ベースの「契約内容登録制度」への照会結果を踏まえた、同一被保険者の他社での死亡保険の保険金額との通計も求められている。

こうした改正は2009年4月より施行され、各保険会社が引受保険金額の制限や未成年者の保険加入そのものの引受停止等の措置を行ったものである。

このように、未成年者の保険加入については、保険法では制限が行われなかったものの、保険監督法の観点から所要の措置が図られたものであるが、来年6月までに施行される改正保険法への各社の取り組みも含め、今後の動向をウォッチしていきたい。

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保険研究部   上席研究員

小林 雅史 (こばやし まさし)

研究・専門分野
保険法・保険業法、英国の約款規制・募集規制等、代理店制度・保険仲立人制度

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