コラム
2008年06月02日

サブプライムローンと住宅バブル

  土肥原 晋

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昨年来サブプライムローンほど経済紙面をにぎわした言葉はないのであるが、半面、これほど騒がれているにもかかわらず、公的な統計に載らないためかサブプライムローンの全体像は分かりにくい。しかし、世界的に金融市場がそのダメージを受けたことは明白であるため、米国の住宅バブル発生の証左(あるいは象徴)と見なされているのである。

サブプライムローン増加の背景には、米国の住宅ブームの一方、金融緩和により運用先を求めていた資金のニーズがあり、さらに、サブプライム証券やそれらを組み込んだ関連商品の売れ行きがよかったことが増加に拍車をかけた。中でも、サブプライムローンを組み込んだCDO(債務担保証券)は、金融理論で構築された価格と格付機関の高い格付けを得て、米国の有力投資銀行によって販売された。そうした“信用力”が裏づけとなって、世界中から買い手を集めたのであるが、その後の急落は言うまでもない。

ガルブレイス教授の『バブルの物語』(ダイヤモンド社、1991年)を読み返すと、こうした状況が伝統的なバブル商品に類似する点は誠に興味深い。教授は、殊のほか新しい金融商品には懐疑的で「金融界は新しい金融手段を歓迎するが、革新的と喧伝される商品は、例外なく既成の手法を僅かに変えただけである」とし、「投機は過去繰り替えされているが、アメリカ人は投機的な失敗をすぐに忘れ、また、自分たちは特別の金融的洞察力を賦与されていると信じる傾向が強く、結局はとんでもない破局に陥り、世界に少なからず影響を与えるのである」としている。

サブプライム問題により、米国の住宅市場は日本のバブル以上にひどい状況にあるとの見方も散見されるが、米国が住宅バブルであったかについてはなお疑問の余地が残される。確かに、現下の米住宅市場は深刻な状態にあり、販売不振が極まり在庫が膨れ、住宅投資の大幅な減少によってGDPが押し下げられているのであるが、先日OFHEOから発表された1-3月期の全米住宅価格は1年前と比べわずか0.03%の下落に留まった(高額物件を含むケースシラー指数は同14%減)。バブル崩壊の始まりをサブプライム問題が急浮上した昨年2月に求めると、その後、1年余たっても住宅価格の崩壊が起きていないわけで、米住宅市場“全体”ではブームの収束といった呼び方の方が正しいのかもしれない。一方、バブルであるなら、サブプライム関連商品が価格崩壊を見せたように、住宅価格の下落はまだ端緒についたばかりである可能性が強いこととなる。

SECは、早ければ6月にもサブプライムローン関連の投資をめぐる法的措置を発表するようだ。格付け会社や金融機関、住宅ローンの貸し手は、リスクを適正に公開せず、サブプライム危機を招いたとして批判されている。上記の著作では、バブルの結末として、崩壊した後になって初めて真相が露呈して非難の的となり、「崩壊の前には金融の天才がいるという一般論が繰り返される」としているが、サブプライム問題に関する限り、再びそうした繰り返しとなりそうな状況にある。

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