2003年12月25日

日本における最適な公的債務構成 -マクロ・ショックに対するリスク・ヘッジの観点-

  竹田 陽介
経済研究部 チーフエコノミスト   矢嶋 康次

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1997年に始まった東アジアにおける通貨危機以来、リスク・ヘッジの観点からの公的債務管理の必要性が国際的に高まっている。本論文は、不確実性下における課税平準化を扱うBohn(1990)モデルにしたがって、日本における最適な公的債務構成について実証的に分析した。Bohn モデルによれば、最適な公的債務構成は、金融資産の収益率間の相関、恒常所得と収益率との相関、恒常的な政府支出と収益率との相関の三つの要因によって決定される。日本における最適な債務構成と現状とを比較した結果、以下の結論を得た。
1.
満期構成が短期化する日本の現状は、長期債から短期債へのシフトの程度はさておき、最適な債務構成に沿った政策である。1987年のブラック・マンデー時に顕著なように、株式収益率との相関が傾向的に低い短期債を中心とした公的債務管理は、金融危機の財政への波及(Contagion)を抑え、課税平準化を助ける。
2.
1987年を最後に残高ゼロになった外貨建て国債に関しても、最適な債務構成に則っている。最適な債務構成の下では、90年代以降の外債発行は、内国債と比較して微々たる比率しか必要とされていない。
3.
2003年11月現在、日本において未発行の物価連動債の不在は、第一次石油ショックのときを除いて、さしたる厚生上の損失をもたらさなかった可能性が高い。但し、石油ショック時には、強烈な負のマクロ・ショックに対するリスク・ヘッジの手段として、インフレ率とGDP 成長率との正の相関から、物価連動債が最適であったと考えられる。その意味においては、物価連動債の不在の社会的なコストは大きかった。
4.
「架空の証券(Synthetic Security)」であるGDP 連動債について、90年代以降、政府債務としての役割が発生してきている。
金融危機に代表される「マクロ・ショック」のリスクをヘッジする手段として、Shiller(1993)がGDP 連動債市場の開設を提唱し、Caballero(2003)がGDP 連動債市場の創設こそIMF の使命であると主張している。公的債務管理は、財政当局が金融取引のグローバリゼーションとどう向き合っていくかという重大な課題に直面している。

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