コラム
2001年09月03日

ブランドショップの進出が促進するアジアに開かれた東京

  小野寺 英機

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久しぶりに銀座並木通りを歩いて驚いた。見慣れたビルの大きなショーウインドーから、ショッキングピンクのまばゆい色彩が溢れ出ている。ついこの前まで、ブルーを基調とした落ち着いたインテリアのレストランがあった場所に、有名ブランドの外国化粧品メーカーが開店したのである。
   このように、銀座や丸の内にはこのところ有名ブランドショップの開店が相次いでいる。東京の最近の地価や人件費の下落が、彼らの進出に拍車をかけていることは言うまでもない。

バッグで有名なルイヴィトンの、全世界売り上げ高の1/4以上を日本人顧客が占めるというから、彼らにとって東京はビジネス上の憧れの地であったと思われる。日本の規制緩和や進出コストの低下が、彼らの憧れを現実に変えたといえよう。
   憧れが現実に変わったのは、消費者にとっても同じであろう。何せ、これまでは高い飛行機代やホテル代を上乗せしなければ手に入らなかった憧れの品が、東京で買えるようになったのだから。もっとも、憧れの品がより多くの人に持たれることになって、ありがたみは多少うすれることになるかもしれないが。

個人消費の低迷が続いているにもかかわらず、外国の有名ブランド品だけは売れ行き好調で、都心の百貨店でもこの秋、彼らの売り場増床をおこなったところが少なくないようである。
   国内のメーカーや小売り業者にとっては、市場を奪われるように見える動きであるが、このような有名ブランドショップ進出のプラス面も見過ごせない。
   ビル業界や不動産業界にとってプラスであることは容易に想像できるし、雇用が創出されるというプラスもある。また銀座など地元商店街にとっては、地方都市の商店街が悩んでいる歯抜け現象が生じないばかりか、商店街の格はむしろアップすると考えられる。

さらに、これまで日本人同様に欧州にまで買いに出かけていたアジアの富裕層が、ブランドショップを目指して東京にやってくるようになると、ホテルなど観光関連業界も潤うことになろう。
   先頃不法入国で話題をよんだ北朝鮮要人の連れの女性も、有名ブランド品で身を飾り立てていたそうだが、アジアの富裕層にとってブランドショップは憧れの場所である。
   ブランドショップの側でも、おそらく東京店をアジア拠点として位置づけているだろうから、店員は当然英語やアジア各国語の知識を要求されることになるだろう。

かっては危険で汚い大都市の代表のように言われたニューヨークが、きれいで安全な都市をめざして努力を続けた結果、90年代半ばには観光客も舞い戻り、ホテルやレストラン、エンターテインメント業界が大いに活気を取り戻したことは、記憶に新しい。
   東京も、外国ブランドショップの集中オープンを機に、もっと外国人観光客の集まる都市にヘンシンすべきでないだろうか。そうすれば、ブランドショップに奪われた市場の何十倍何百倍にも相当するおカネが、東京に落ちることになるだろう。
   

シルベスタースタローンだったか、東京をもっと映画撮影に協力的な都市にしてほしいと、最近石原都知事に申し入れたときく。世界的にヒットする映画に東京の景色がふんだんに現れたなら、これに勝る宣伝手段はないだろう。1950年代にヒットした「ローマの休日」が、いかに世界中から観光客をローマに引き寄せたか、その影響の大きさははかりしれない。

日比谷周辺の劇場や歌舞伎座、国立劇場など伝統芸能の劇場も、せりふの通訳だけでなく、夕刻の開演時間をもう少し遅らせるなど、外国人観光客をもっと意識して運営を行えば、東京の魅力はさらに増すだろう。
   地下鉄大江戸線の開通など交通ネットワークの整備によって、これまで都心部のあちこちに散在してきた文化的ストックが、一つの集積として存在するようになってきた。上野の森や両国の大江戸博物館に、都内あちこちに点在する小さな美術館や記念館を加えれば、東京の文化的蓄積はかなりなものになると思われる。さらにそれらを意識的につなげる交通手段の整備も必要であろう。

都市の魅力と国際競争力を高めるための都市の再生は、小泉内閣の掲げる「骨太の経済方針」でも、重点的に推進すべき分野の一つに掲げられている。
   このところテレビやラジオでは、公共事業というと直ちに税金の無駄遣いに結びつくような議論が多いが、都市部では公共事業はまだまだ必要である。特に東京は、住民にとっての開発という視点に加え、アジアにおけるかけがえのない文化都市創造という視点からの開発プランも必要としている。

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