1999年03月25日

構造改革に挑むアセアン自動車産業 -国際水準の競争力を目指して-

  加藤 摩周

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1.
80年代から始まった日系メーカーの海外現地生産は、ほぼ4段階に分けられ、現在はその第4ステージに突入している。第1段階は80年代前半で北米における貿易摩擦回避のための輸出代替、第2段階はプラザ合意後の円高による採算性低下回避のため、欧米における生産能力を増強した80年代後半で、この時期は国内のバブル景気もあり、国内外の生産能力増が両立した時期であった。しかし第3段階では、バブル崩壊による国内市場縮小で、国内生産と海外生産はトレード・オフの関係になり、93年以後の急激な円高も相俟って、各社の欧米戦略では現地生産の拡大、部品現調率の向上など現地化が鮮明となった。そして現在の第4段階では、欧米拠点では部品の現地調達率に表れるコスト競争力に加え、設計等の開発をも含めた現地生産の「質・深さ」が事業成否に決定的な影響を及ぼす段階となり、能力拡張の主力はアセアン市場に向かっていた。アセアン市場は日系メーカーにとって,日本、北米に次ぐ第3の規模を持つ「21世紀の市場と競争力」を確保するための重要な市場と位置づけられていた。
2.
日系メーカーのアセアン市場進出は、歴史が古く、部品調達体制も一通り揃っており、各国内で圧倒的な競争力を有していたが、市場規模が小さいため国際競争力は育たなかった。しかし80年代末から各国がアセアン・トータルとして国際競争力確保のため、各国拠点での集中生産を促した協調政策を採用したことから、基幹部品の大型集中投資や、部品メーカー、素材メーカー、サポーティング・インダストリーの進出が促され、自動車産業基盤が徐々に整いつつあるなかで、97年7月のタイを口火とする通貨危機に見舞われた。
3.
アセアン諸国では、80年代後半からの直接投資の効果で産業高度化、所得水準の向上が急速に進み、モータリゼーションの本格化に必要な1人当りGDP3,000ドルの水準を既に超えている地域もあった。しかし今回の通貨危機による景気後退局面では、実質所得水準の大幅低下に加え、金融システム・信用創造機能が大きく傷ついており、96年レベルへの市場規模回復には時間がかかろう。
4.
このような状況下、アセアン市場に進出している完成車・部品メーカーは欧米メーカーも含めて、稼働率を引き上げるため、アセアン域外への輸出拠点としての育成に乗り出している。域外輸出のためは、これまでのアセアン基準から国際水準のコスト、品質といった競争力が求められるため、軌道に乗るには相当の努力が必要であろう。しかし技術移転後にはアジア専用車のみならず、各国の特性に基づいた完成車、基幹部品の世界市場へ向けた供給拠点として成長が期待される。
5.
国際水準の競争力の獲得は、開発・生産拠点としてのアセアン拠点の自立性を高め、産業基盤を大幅に強化しよう。現在のアセアン拠点での輸出拠点化の取り組みは、国内拠点の役割を委譲している面もあり、短期的には国内や他の海外拠点への影響は否めない。しかしながら長期的に現地拠点の強化、すなわちコストのアセアン化や特定車種の集中生産・輸出拠点化といったことは、大幅な円高に苦しんだ日本の自動車産業にとって、部品調達機能の多角化によるリスク回避や、廉価モデルの欧米・韓国等のメーカーとの価格競争の面等でメリットをもたらすのである。現在のアセアンにおける自動車産業としての構造改革終了後には、アセアン自動車産業の基盤は以前に比べはるかに強化され、そのことは第4段階で本格的なグローバリーゼーションを目指す日本の自動車・部品産業を一段と強化しよう。したがって現在の現地での取り組み姿勢の差が、成長回帰後のアセアン市場だけではなく、トータルとしての企業間格差として顕在化しよう。
6.
課題は、従前よりはかなり好転しているものの、素材産業を含むサポーティング・インダストリー等の調達環境や、労働者の基礎的な教育不足といった問題がある。一方で現地日系メーカーにもアセアンの素形材を使いこなす設計・意欲や、せっかく人材を育てても優秀な人材から辞めていく、という人材育成上の課題がある。したがって長期的にアセアンと「共生」をはかり、自らの成長戦略にアジアを組み込んでいくためにも、これまでの国内親会社優先のオペレーションから、米国ビッグ3のような人事を含めた本格的な「連結経営」への切り替えが不可欠となろう。

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