1998年01月25日

運輸業における規制緩和の生産効率に及ぼす影響 -トラック輸送業からのインプリケーション-

  木村 達也

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1.
バブル期後の低成長のなか、日本経済の構造改革による競争力強化のため、また景気浮揚のために規制緩和を求める声が強い。近年の規制緩和主張の根拠は、経済発展による状況変化、経済理論・分析の進展、米国など諸外国の規制緩和などに基づいている。特に運輸部門では、物流サービスが各産業に不可欠なことから、日本経済の高コスト構造是正のため、規制緩和が強く求められている。
2.
一般的に規制の理論的根拠は、市場メカニズムでの資源配分が最適とならない要因がある場合、市場介入により資源配分の是正ができることにある。理論的根拠から行われる規制のほか、安全性や環境確保のための社会的規制がある。運輸分野の規制根拠は、トラック輸送業、鉄道、内航海運が限界費用逓減、航空運送が限界費用逓減と不確実性と考えられる。乗合バス、旅客船は所得分配の是正、タクシーは情報の不完全性、港湾運送は社会的規制と考えられるが、貸切バスは規制の根拠は弱い。また、運輸一般によく主張される過当競争の防止は、根拠とはなり得ない。
3.
トラック輸送業は、他運輸分野に先がけ90年12月に貨物自動車運送事業法施行により規制緩和がなされた。これにより事業への参入は需給調整規制に基づく免許制から許可制に、運賃・料金は認可制から事前届出制とされ、運輸分野で最も競争的となった。
4.
トラック輸送業ではバブル崩壊後に貨物輸送量が低迷したが、規制緩和により事業者の増加率が高まり、競争が促進された。その結果、運賃・料金は低下し、超過利潤も縮小に向かっている。
5.
生産効率の改善をみるため、生産要素の投入量変化によらない生産量変化を表す全要素生産性(TFP:Total Factor Productivity)の変化率を、財務諸表等をもとに計測した。あわせてトラック輸送業の車両規模別事業者のTFPの変動も計測した。この結果トラック輸送業の生産効率は、貨物自動車運送事業法の施行後に、多くの産業や運輸分野が低下するなか上昇し、しかも法の施行前よりも上昇率は高い。これからみる限り規制緩和により生産効率の改善が進んだものと結論できる。
6.
このようなトラック輸送業での規制緩和の影響の分析結果から、他の運輸分野でも需給調整規制撤廃など規制緩和が進めば、非効率な生産が改善されると示唆される。生産効率の改善は、生産者の事業効率改善だけではなく、価格低下や新たな運輸サービスの提供からの消費者メリットや景気浮揚にもつながる。

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