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2025年10月09日

景気ウォッチャー調査2025年9月~大阪・関西万博閉幕前の駆け込みにより、近畿は好調~

経済研究部 研究員 佐藤 雅之

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1.景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差0.4ポイント上昇の47.1

内閣府が10月8日に公表した景気ウォッチャー調査によると、25年9月の景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差0.4ポイント上昇の47.1と、5ヵ月連続の上昇となった。

地域別では、全国12地域中、7地域で上昇、5地域で低下した。最も上昇幅が大きかったのは近畿(前月差4.7ポイント)で、最も低下幅が大きかったのは東北(同▲3.1ポイント)であった。

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連が前月差0.3ポイント、企業動向関連が同▲0.5ポイント、雇用関連が同2.6ポイントであった。内閣府は基調判断を「景気は、持ち直しの動きがみられる」と据え置いた。
景気の現状判断DI(季節調整値)/現状判断DI(季節調整値)の変動要因

2.大阪・関西万博の閉幕を前にした来場者増

家計動向関連では、飲食関連(前月差▲1.0ポイント)は低下したものの、住宅関連(同5.3ポイント)やサービス関連(同0.1ポイント)、小売関連(同0.3ポイント)は上昇した。住宅に関するコメントをみると、「新たな着工件数が半年前の 1.5 倍に増えており、作業員の人手が足りなくなるなど、良い傾向にある(近畿・住宅設備)」や「建て替えや土地所有の客の割合がやや多い傾向にあり、棟単価もやや上昇している(九州・住宅販売会社)」などがあった。住宅着工戸数は建築物省エネ法・建築基準法改正の影響で、2025年4月以降急速に落ち込んでいるが、先行きは回復していくことが示唆される。一方、飲食に関するコメントをみると、「ランチ需要の動きに大きな変化はないが、企業の宴会やグループでの食事会を含む、ディナーの利用者が大幅に減少している(近畿・一般レストラン)」など、ネガティブなコメントがみられた。

企業動向関連では、非製造業(前月差0.4ポイント)は上昇したが、製造業(同▲1.4ポイント)は低下した。景気が悪くなっていると判断したコメントのなかには、「工業部会のイベントで、家族経営の会社社長や社員数 3000 名の社長など 10 名程と話す機会があり、現況を聞いたところ、全社で減収減益、試作や開発関係の受注も例年より明らかに減っている(北関東・一般機械器具製造業)」などがあった。一方で、関税に関するコメントをみると、「米国の関税政策の見通しが立ち、各社方向性が定まってきている。ただし、具体的なアクションはこれからとみている(東北・金属製品製造業)」など、ポジティブなコメントがみられた。

下図は、景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(現状)」のコメントをもとに計量テキスト分析1を行い、共起ネットワーク2を作成したものである。景況感が改善したと判断した回答者のコメントには、大阪、関西万博、観光客、回復といった単語が多く含まれていることが読み取れる。
「景気判断理由集(現状)」のコメント
 
1 分析にはKH Coder 3(樋口2020)を使用した
2 共起ネットワークとは、よく一緒に使われる語同士を、線で結んだネットワークのことである

3.景気の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差1.0ポイント上昇の48.5

2~3か月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月差1.0ポイント上昇の48.5となった。先行き判断DIの内訳をみると、雇用関連(前月差▲1.7ポイント)は低下したが、家計動向関連(同0.9ポイント)、企業動向関連(同2.5ポイント)のDIは上昇した。

家計動向関連では、「最低賃金の改定により基本時給が上がり、デイリー商材を販売しているコンビニとしては、買上点数や単価の上昇を期待している(南関東・コンビニ)」など、賃金上昇が消費活動を下支えするとのコメントがみられた。一方、「賃金も上昇しているが、物価高に追い付いておらず悪くなるとみられる(四国・衣料品専門店)」など、実質賃金のマイナスが継続していることを背景に、先行きに懸念を示すコメントもみられた。

企業動向関連では、「国内建設投資について、当面堅調に推移すると見込まれることから、今後の景気はやや良くなる(北海道・建設機械リース)」や「省人化設備の引き合いが増えている(東北・一般機械器具製造業)」など、北日本を中心に設備投資に関してポジティブなコメントがみられた。
景気の先行き判断DI(季節調整値)/先行き判断DI(季節調整値)の変動要因
景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(先行き)」のコメントをもとに計量テキスト分析を行い、共起ネットワークを作成すると、景況感が改善すると判断した回答者のコメントには、インバウンド、イベント、予約といった単語が多く含まれていることが読み取れる。インバウンドに関するコメントでは「紅葉シーズンが始まったことで、若干、国内客が回復傾向にある。インバウンドの予約も、冬季シーズンに向けて回復傾向にある。このため、今後の景気はやや良くなる(北海道・観光型ホテル)」や「インバウンドや周辺施設の建設ラッシュによる宿泊増加で、連日の満室が予想される(甲信越・都市型ホテル)」などがあった。
「景気判断理由集(先行き)」のコメント
2025年9月調査の結果は、景況感は現状、先行きともに改善していることを示すものであった。特に近畿地方では、大阪・関西万博閉幕前の駆け込みによって盛り上がりを見せている。コメントを見ると、「大阪・関西万博の閉幕が迫って来場者の増加が予想されるなか、引き続き万博の関連売場では売上の拡大が見込まれる(百貨店)」や「大阪・関西万博の就業者の間では、再就労を希望する声が多い(民間職業紹介機関)」など、閉幕を目前に控えた万博関連需要の高まりが、地域経済を下支えしている様子がうかがえる。2027年3月19日からは横浜・上瀬谷で国際園芸博覧会が開催予定となっており、新たな観光需要喚起のきっかけとなることが期待される。
近畿の現状判断DI(季節調整値)の推移

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年10月09日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   研究員

佐藤 雅之 (さとう まさゆき)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2020年4月 株式会社横浜銀行
     2024年9月 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

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