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2025年10月06日

円安が続く背景を改めて点検する~円相場の行方は?

経済研究部 主席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 今年の春以降、ドル円では緩やかな円安基調が続いている。この間に主たる材料である日米金融政策の方向性の違いが円高ドル安に寄与し、インバウンドの増加も円高に働いてきたが、世界的なリスク選考地合いや日本の財政拡張観測、国内勢の対外投資とデジタル赤字という円安要因の影響が上回ったことが、円安基調の背景にあると考えられる。
     
  2. さらに、自民党総裁選で高市氏が新総裁に選出されたことを受けて、本日には3円近く円安が進んでいる。日銀の利上げが遅れ、財政がより拡張的になるとの思惑が高まったためだ。財政拡張観測で株価が急伸したことも円安に拍車をかけている。
     
  3. 当面は高市政権に対する思惑から円が下落しやすい地合いとなるが、今後、数カ月~1年程度の期間の方向感としては円高ドル安と見ている。FRBが段階的な利下げを続けるほか、米政権によるFRBに対する圧力によってドルの信認が揺らぐことがドル安圧力となる。一方、国内では、高市政権の発足に伴い、従来よりも日銀が利上げに踏み切る際のハードルは高まりそうだ。ただし、日銀が利上げを停止すれば、円安が進んで物価高に拍車がかかりかねないこと、米政権がドル安に繋がる日銀の利上げを望んでいるとみられることから、政権としても日銀の利上げ継続自体は容認し、利上げが円高に寄与すると見込んでいる。一方、国内勢による対外投資やデジタル赤字の継続によって、円高のペースは抑制されそうだ。来年末の水準は1ドル140円強と予想している。
     
  4. なお、メインシナリオに対するリスクバランスは、円安リスクの方が大きめと見ている。高市政権が大幅な財政拡張を進めたり、日銀の利上げを強力にけん制したりすれば、メインシナリオよりも円安で推移するだろう。また、日米関税交渉で合意された日本側による5500億ドルの対米投資も、ドル資金調達に伴う円安進行リスクを内包している。

 
ドル円レートと日米金利差
■目次

1.トピック:円安が続く背景を改めて点検する
  (ドルも円も下落基調に)
  (円下落の背景)
  (次第に円高ドル安へ)
2.日銀金融政策(9月)
  (日銀)政策金利維持+ETF・J-REITの売却を決定
  (今後の予想)
3.金融市場(9月)の振り返りと予測表
  (10年国債利回り)
  (ドル円レート)
  (ユーロドルレート)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年10月06日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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