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- 仙台オフィス市場の現況と見通し(2018年)
2018年04月05日
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1. はじめに
仙台オフィス市場は、他の主要都市と比較して改善が遅れていたが、2016年以降は空室率の低下ペースが加速し、市況回復が本格化しつつある。今後も新規供給の予定は限られ、堅調な市況が続くと予想される。本稿では、仙台のオフィス市況を概観した上で、2024年までの賃料予測を行う1。
1 過去の仙台オフィス市場に関するレポートとして、竹内一雅「仙台オフィス市場の現況と見通し(2017年)」(2017.2.20)を参照。
1 過去の仙台オフィス市場に関するレポートとして、竹内一雅「仙台オフィス市場の現況と見通し(2017年)」(2017.2.20)を参照。
2. 仙台オフィス市場の空室率・賃料動向
仙台のオフィス市場は、空室率が2014年~2015年にかけて小幅な低下にとどまるなど、他の主要都市と比較して需給改善が遅れていた。しかし、2016年からは空室率の低下ペースが加速し、他の主要都市と遜色のないペースで空室率が低下している2。三幸エステートによると、2017年12月の空室率は7.20%と、前年同月の8.55%から低下した(図表-1)。
成約賃料(オフィスレント・インデックス)は、2015年下期をピークに足踏みしていたが、2017年下期は前期比+9.7%、前年同期比+7.1%と、直近の高値水準まで回復している。成約賃料は直近のボトム(2010年下期)から+31.3%の上昇となったものの、ファンドバブル期(2006年~2008年頃)のピーク水準の83.2%にとどまる(図表-2)。
成約賃料(オフィスレント・インデックス)は、2015年下期をピークに足踏みしていたが、2017年下期は前期比+9.7%、前年同期比+7.1%と、直近の高値水準まで回復している。成約賃料は直近のボトム(2010年下期)から+31.3%の上昇となったものの、ファンドバブル期(2006年~2008年頃)のピーク水準の83.2%にとどまる(図表-2)。
仙台の賃料が伸び悩んだ理由は、オフィス需給の悪化が長期化したためである。仙台では、リーマンショックによりオフィス需要が急減したタイミングである2008年~2010年にかけて大規模ビルの大量供給があったため、2008年半ばから大規模ビルを中心に空室率が急上昇した(図表-6、7)。その後、東日本大震災の復興需要により、空室率は低下し、2013年には大量供給前の水準に戻った。しかし、震災復興に伴う一時的なニーズであったため、オフィス需要の力強さに欠けた。大規模ビルなどへまとまった需要が向うことはなく、復興需要の剥落により人口流入が減少すると、オフィス需要の伸びは鈍化した。2014年~2015年にかけては規模別の空室率の差がほぼない状態となり、大量供給によって生じた需給の歪みは解消しなかった。2016年頃になると、IT企業の進出拡大や企業業績回復などを背景にオフィス需要が高まり、漸く需給が改善すると、まずは大規模ビルなどに需要が向かい、規模別の空室率の差が再び拡大した。大量供給のインパクトを解消するのに、結果的に6年近く要した。このように、仙台では大規模ビルの大量供給に起因した需給の歪みがオフィス需要の低迷などを背景に長期化したため、空室率が高止まり、賃料が伸び悩んだと考えられる。
2 2016年から2年間の空室率の変化は、低下幅が大きい順に、大阪市(▲4.0%)で、福岡市(▲3.2%)、札幌市(▲3.1%)、仙台市(▲2.8%)、名古屋市(▲1.8%)、東京都心5区(▲1.5%)。
3 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
4 賃料サイクルは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図上を、その進展とともに時計回りに動く。賃料サイクルの起点を、賃料下落から上昇に転じる局面とすると、賃料サイクルは、通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→(4)空室率低下・賃料下落、という動きになる。
5 三鬼商事の定義による。仙台の主要5地区(駅前地区、一番町周辺地区、県庁・市役所周辺地区、駅東地区、周辺オフィス地区)からなり、空室率等の調査対象はこの地区に立地する延床面積300坪以上の主要賃貸事務所ビル。
(2018年04月05日「不動産投資レポート」)
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竹内 一雅
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