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米国財務省が金融規制のための政府のコア原則に関する報告書を公表-保険業に関する勧告内容について-
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NAMICは、以下の内容のプレスリリース7を公表している。
Jim Grande政府業務担当SVPは、「NAMICは、保険における連邦の役割は限定的で、州ベースの規制構造に敬意を表すべきである、と長い間主張してきた。」とし、「適切な場合には、国際交渉の場合と同様に、連邦政府は州規制当局と協力して、米国の規制を促進し、米国の会社がグローバルに公正な取扱を受けることを確実にしていくべきである。」と述べた。
2017年10月27日
メディア声明| 保険に関する財務報告
imi Grande政府業務担当SVPの声明
全国相互保険会社協会
財務省の報告書は、資産運用管理及び保険業界の規制の枠組みを評価し、それが政府のコアな金融規制原則に準拠しているかどうかを評価するという大きな課題を引き受けている。その報告書の長さと重大さから期待されるように、我々が評価するためにさらなる詳細が必要な多くのものとともに、多くの肯定的な勧告がある。
「一般的に、NAMICは、米国の州ベースの保険監督制度の財務省による強力かつ明確な承認を確認することで非常に元気付けられた。また、我々は財務省の以下の勧告を歓迎した。システミックリスクの代わりとしてただ単に規模を使用することから転換し、連邦のオーバーリーチを減らし、より協調的な連邦保険局に再び争点を合わせ、住宅都市開発省の差別的効果ルールを再評価し、連邦政府に、重複的なデータコールを発行するのではなく、州規制当局及びNAICが取得した情報を活用させる。」
「NAMICは、保険における連邦の役割は限定的で、州ベースの規制構造に敬意を表すべきである、と長い間主張してきた。適切な場合には、国際交渉の場合と同様に、連邦政府は、州規制当局と協力して、米国の規制を促進し、米国の会社がグローバルに公正な取扱を受けることを確実にしていくべきである。今後NAMICは、引き続き、報告書に含まれている多くの方針と勧告を分析し、どれが実行可能で、保険会社と保険契約者にとって有意義な利益をもたらすのかを決定していく。」と述べた。
PCIは、以下の内容のプレスリリース8を公表している。
Robert Gordon氏(政策・調査・国際担当SVP)は、「報告書は、連邦保険局が国際フォーラムや交渉の場における米国保険業界の提言者であることを含め、連邦保険局の改革を明らかにしている。」とし、また「FIOに対して、州の保険監督当局とNAICとの調整を通じて、データコールの不一致を排除又は削減しようと呼びかけていることを喜んでいる。」と述べた。
2017年10月30日
PCIは保険に関する財務報告を賞賛する
ワシントン - Robert Gordon氏(政策・調査・国際担当SVP)は、財務省の報告書「経済的機会を創出する金融システム:資産運用管理と保険」に対応して、次の声明を発表した。報告書は、トランプ大統領のエグゼクティブ・オーダー(13772)に従って書かれており、金融サービス部門の規制を支配するための「コア原則」を定めている。
「PCIは、多くのメンバーの懸念に対処する財務省の報告書を歓迎する。財務省の報告書は、保険契約者を保護するための州規制制度の150年の記録を称賛し、支持している。報告書は、連邦保険局が国際フォーラムや交渉の場における米国保険業界の提唱者であることを含め、連邦保険局の改革を明らかにしている。PCIはまた、FIOに対して、州の保険監督当局とNAICとの調整を通じて、データコールの不一致を排除又は削減しようと呼びかけていることを喜んでいる。」
「重要なのは、財務省の報告書は、住宅都市開発省に対して、保険会社に適用される差別的効果ルールを再評価することを求めている。」
「PCIは、保険利用者や市場にとって重要な問題について、財務省と議会と引き続き協力していくことを楽しみにしている。」
5―まとめ
ここでは、今一度、注目されているテーマに関するこの報告書での取扱等についてまとめてみる。
1|SIFI指定
財務省は、保険会社に対する現在のSIFIの方法論を問題視している。米国の保険会社は、規模や相互関係によってシステミックリスクとして選別されるべきではなく、活動によって判断されるべきである、と主張している。すなわち、保険会社に銀行のような監督を課す連邦規制を拒否し、大規模な保険会社をSIFIに指定することが国の経済を保護する適切な方法であるかどうかについて疑問を呈している。
FSOCは、2013年から2014年にかけて、保険会社グループであるAIG、Prudential Financial、MetLifeとユーティリティ・コングロマリットであるGEの子会社であるGE Capitalの4社をSIFIに指定した。その後、AIGは、2008年の金融危機以降、成功裏にリスクを回避したこと等を理由に、9月末に指定を解除された9。GE Capitalは、2016年6月にその指定を解除されている。
一方で、MetLifeは、その指定に関して裁判所に訴えて成功したが、現在は係属中である状況下で、連邦監督下におかれることになる指定に異議を唱えている。また、Prudential Financialは、レビュープロセスを通じて、指定に異議を唱えながら、オプションを検討している。
今回の報告書により、MetLifeとPrudential Financial がSIFIの指定を解除されることになるものと考えられている。
Prudential Financialの会長兼CEOのJohn Strangfeld氏は、「会社のSIFIとしての指定に影響を与える可能性がある財務省の報告書に元気付けられた。」と述べ、「法規制は明示的に変更されていないが、報告書はPrudential Financialの方針に沿った勧告事項を含んでいる。」としている。さらに「特に、システミックリスク評価は、エンティティ主体よりも活動に基づくべきであり、様々な規制機関間の調整が強化されるべきであるという勧告に満足している。」と述べている。
なお、財務省は、今回の報告書の公表後、11月17日に、FSOCの指定プロセスの見直しに関する覚書10を大統領に提出している。この内容については、次回のレポートで報告する。
9 保険年金フォーカス「AIGのSIFI指定解除について-FSOCの公表内容と関係者の反応-」(2017.10.11)を参照していただきたい。
10 https://www.treasury.gov/press-center/press-releases/Pages/sm0218.aspx
報告書は、州が米国における保険業界の主たる監督当局であり、連邦レベルの保険規制は州と協調して実施されるべきであるとして、連邦準備制度理事会は、保険会社に課される最低限の資本要件に関して、州の保険監督当局との協力関係を改善することを提案している。
州レベルでは、保険監督当局は、単体ベースで資本要件を課しているが、保険グループの資本評価をまだ開発していない。NAICは、現在リスクベースの資本合算アプローチを使用した米国のグループ資本の計算の開発に取り組んでいる。
一方で、連邦準備制度理事会は、2016年6月に、保険会社SIFIのための資本連結アプローチと、保険活動に有意に従事している預貯金取扱金融機関持株会社預金機関のためのビルディング・ブロック・アプローチを提案している11。
今回の報告書は、州と連邦の資本イニシアチブを調和させ、連邦が保険会社グループをどのように規制するかを再考することを提案している。そして、その調整に当たっては、FIOが中心的な役割を果たすことを指示するとしており、FIOのミッションについても再定義して、明確化を図っている。
これまで、いくつかの問題において対立してきた連邦と州の関係が、これを機にどのような形で協調が図られていくのかについては引き続き注目していく必要がある。
11 基礎研レポート「米国における連邦による保険資本規制-FRBが金融システムの安定上重要な保険会社等に対する資本規制のアプローチ等を公表-」(2016.6.14)を参照していただきたい。
報告書は、アメリカ・ファーストの考え方を維持しつつも、国際的な基準策定等の動きには引き続き積極的に関与していく姿勢を示している。米国のメンバーが、IAIS等において、引き続き重要なポジションを確保して、リーダーシップを発揮していくこと、チームU.S.A.として、グループ資本のアプローチ等の統一された米国の主張や考え方を国際的な場でも受け入れられるように理解を得て認めてもらうように主張していく方針を確認している。
取り敢えずは、IAISにおけるICSの検討において、米国として統一された方式でのグループ資本基準がまとまり、そうした考え方が国際的にどのように認められていくことになるのかが注目されるところとなる。
今回の財務省の報告書は、米国の保険会社にとって、総じてポジティブな内容であり、財務省の勧告が実施されれば、多くの会社は、規制関連の費用を削減し、市場での柔軟性をさらに高めることができる、と考えられている。
SIFI指定についても、直接的には一部の保険会社のみが関わる問題であるが、今回の報告書に向けた分析等を通じて、銀行と保険の間のビジネス及び法的構造の違い等についての理解が深まり、必ずしも銀行に準じた規制が保険には適切なものではない、との考え方が広く認識されたことは大きな意味があるものと考えられる。
いずれにしても、今回の報告書は、今後の米国の保険会社監督における取組みの方向性を示したものであるが、例えば資本規制に関しては、米国における資本規制だけでなく、国際的な資本規制の動向にも大きな影響を与えていくことになると想定されることから、大変注目されているものである。
この報告書を踏まえての米国の今後の実際の取組みについては引き続き注視していくこととしたい。
(2017年11月27日「基礎研レポート」)
中村 亮一のレポート
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