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米国財務省が金融規制のための政府のコア原則に関する報告書を公表-保険業に関する勧告内容について-
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効率的な規制と政府プロセスを確保することは、効果的な金融規制の枠組みの重要な要素である。
まずは、以下の勧告は「コア原則と整合的」であり、「これらの勧告の実施は、金融規制の枠組みをより効率的かつ効果的にするために合理化するものである。これらの変更により、米国民は、退職時のための貯蓄、個人の富の醸成、予想外の出来事からのビジネスや個人の保護を可能にする独立した情報に基づいた金融上の決定を行うことができるようになる。」と述べている。
ここでは、「FIO(連邦保険局)の改正された役割」と「ISLHC(保険会社貯蓄貸付持株会社)の連邦準備制度理事会規制」の2点について報告する。
(1)FIO(連邦保険局)の改正された役割
FIO(連邦保険局)の役割については、以下の目的のために、FIOのミッションを導く5つの柱を作成している。
1) 米国の保険会社の海外市場における競争力をより強化する。
2) 米国の州ベースの保険規制制度、米国の保険業界、米国の保険契約者のための適切かつ調整された主張を確実にすることにより、様々な国際フォーラムにおける米国の利益を促進し、米国が保険政策の開発をより効果的に行えるようにする。
3) 州と連邦機関の連携を強化し、州の保険監督当局との協議を改善し、研究と分析の専門知識を提供することによって、規制が効率的、効果的、適切に調整されるようにする。
そして、「FIOがこれらの中核的な柱に責任を持つことを確実にするために、FIOの透明性向上とステークホルダー関与の強化に取り組んでおり、これらの目標を達成するための仕組みを導入する予定である。」としている。具体的には、「例えば、財務省は、その国際交渉の方針と行動を、公開フォーラムと非公開フォーラムの両方を通じて、様々なステークホルダーがより入手しやすいもの」とし、財務省とFIOは、「保険業界、州監督当局、米国の保険契約者にとって重要な問題を進展させる上で、州の保険監督当局やステークホルダーとのより定期的かつ一貫した関与」をコミットするとしている。
なお、こうした勧告には、「州レベルでの統一された商品承認プロセスと基準の奨励も含まれ」、これが「新商品の市場投入のスピードを早める」とされている。
連邦保険局の改正された役割
とりわけ、FIOは、連邦政府の保険業界の専門知識の欠如に対処し、特定の政府保険プログラムや活動の管理を支援し、ますますグローバル化している業界で米国連邦政府の視点を提供するために設立された。財務省は、FIOの法定枠組みとの整合性を高めるとともに、長年にわたって確立された米国の州ベースの保険規則との一貫性を確保するため、FIOの使命を導く5つの柱を作成した。
・米国の州ベースの保険規制制度を推進し、国際的なフォーラムや交渉及び海外市場で、米国の保険セクターのために主張する。
・包括的な研究分析の発表、新興問題に関する相談、連邦保険プログラムの評価を通じて、連邦政府、州の保険監督当局、業界に保険政策の専門知識と助言を提供する。
・連邦政府と州の保険監督当局が関与する保険問題について、連邦政府と州の保険監督当局との間の強化された調整を通じて、を含む調整された協調的なリーダーシップを提供する。
・米国の金融安定を脅かす可能性のある保険関連事項について、長官とFSOCに助言することにより、米国の金融システムと経済を保護する。
・保険商品へのアクセスを促進し、テロリズムリスク保険プログラムを管理することで、米国の金融安全性を保護する。
これら5つの柱は、エグゼクティブ・オーダー13772のコア原則を進めるために設立されている。第1に、これらは米国の保険会社が積極的に参加し、場合によっては継続的な拡大の機会を見出している海外市場において、米国の保険会社の競争力をより強化する。第2に、米国の州ベースの保険規制制度、米国の保険業界、米国の保険契約者のための適切かつ調整された主張を確実にすることにより、様々な国際フォーラムにおける米国の利益を促進し、米国が保険政策の開発をより効果的に行えるようにする。最後に、これらの柱は、州と連邦機関の連携を強化し、州の保険監督当局との協議を改善し、研究と分析の専門知識を提供することによって、規制が効率的、効果的、適切に調整されるようにすることを目的としている。FIOの改訂された役割の追加の例は、このレポートの保険セクション全体で見ることができる。
勧告
財務省は、FIOがこれらの中核的な柱に責任を持つことを確実にするために、FIOの透明性向上とステークホルダー関与の強化に取り組んでおり、これらの目標を達成するための仕組みを導入する予定である。例えば、財務省は、その国際交渉の方針と行動を、公開フォーラムと非公開フォーラムの両方を通じて、様々なステークホルダーがより入手しやすいものとすることをコミットしている。さらに、財務省とFIOは、保険業界、州監督当局、米国の保険契約者にとって重要な問題を進展させる上で、州の保険監督当局やステークホルダーとのより定期的かつ一貫した関与をコミットしている。
ISLHC(保険貯蓄貸付持株会社)の連邦準備制度理事会規制については、例えば、「連邦準備制度、州保険監督当局、NAICが正式な手続きを確立し、州の保険監督当局と連邦準備制度の両方によって規制されている保険会社の監督と検査をより適切に調整するための措置を講じる」こと及び「連邦準備制度理事会が、各ISLHCの独自のビジネスモデル、各ISLHCの規模、組織構造、潜在的なリスクにISLHCの検査が適切に適合し、比例しているかどうかを再評価すること」を勧告している。
勧告
財務省は、重複した非効率な監督を減らすために、連邦準備制度理事会が、ISLHC(保険貯蓄貸付持株会社)の最終的な親会社に関する情報を含む州監督当局とNAICによってISLHCから収集された情報を活用することを勧告している。財務省は、連邦準備制度、州保険監督当局、NAICが正式な手続きを確立し、州の保険監督当局と連邦準備制度の両方によって規制されている保険会社の監督と検査をより適切に調整するための措置を講じることを勧告している。
財務省はまた、連邦準備制度理事会が、各ISLHCの独自のビジネスモデル、各ISLHCの規模、組織構造、潜在的なリスクにISLHCの検査が適切に適合し、比例しているかどうかを再評価することを勧告している。
金融危機以降、金融サービス政策に取り組む国際的な規制フォーラムが重要視されてきており、これらのフォーラムは、金融の安定性、規制の分断化、市場アクセスの問題に取り組んでいる。財務省は、国際的な規制問題が論議され、基準が制定されていることから、国際フォーラムにおける米国の継続的な取り組みを推奨している。「グローバル化の進展と、現在進行中の国際的規制対話のために、米国は引き続き関与し、米国の利益を促進するための国際フォーラムで強い声を発していかなければならない。」としている。
また、以下の勧告は「コア原則と整合的」であり、「その実施により、米国企業は国内外の市場における外国企業との競争力を保持し、国際的な金融規制交渉や会議において米国の利益をもたらすことができる。さらに、これらの勧告の実施は連邦金融規制機関の政策決定における公的説明責任の回復に役立つだろう。」としている。
(1)保険に関する多国間活動
(1-1)FSB(金融安定理事会)
FSBでの検討については、「金融安定性のリスク評価と基準は、業界に合わせて調整し、IAISに関連する保険関連事項を含む、必要な技術監督上の専門知識を有する適切な基準設定者によって行われるべきである。」とし、さらに、「FSBの米国メンバーは、セクターの構造化とリスク管理の差別化された方法を適切に考慮するように、G-SIFI(グローバルにシステム上重要な金融機関)枠組みの見直しに努めるべきである。」としている。また、「IAISなどの基準設定機関での技術監督上の専門知識への依存は、この策定努力にとって重要である。」としている。
さらに、「FSBの努力がプルデンシャル規制の観点から過度に影響を受けていることを懸念」しており、「場合によっては、銀行業界と保険業界の違いや規制制度の違いを十分に考慮していない可能性もある。」としている。したがって、「FSBが、適切な場合には、保険関連の問題についてIAISの専門知識をより有効に活用すべきだ」としている。
勧告
FSBやIAISなどの国際的な金融規制基準設定機関での米国の関与は、金融安定を促進し、米国金融機関の競争力を高め、金融イノベーションを妨げる不必要かつ過度に負担をかける規制上の基準設定を防止するために重要である。財務省は、様々な脆弱性が世界的な金融安定リスクを創出し、規制措置を講じなければならないかどうかを評価する幅広い義務を負っているが、FSBの活動は世界的な金融安定性を監視し強化する目的に限定すべきであると強く信じている。可能であれば、金融安定性のリスク評価と基準は、業界に合わせて調整し、保険関連事項に対するIAISを含む、必要な技術監督上の専門知識を有する適切な基準設定者によって行われるべきである。さらに、FSBの米国メンバーは、セクターの構造化とリスク管理の差別化された方法を適切に考慮するように、G-SIFI枠組みの見直しに努めるべきである。IAISなどの基準設定機関での技術監督上の専門知識への依存は、この策定努力にとって重要である。
財務省はまた、FSBの努力がプルデンシャル規制の観点から過度に影響を受けていることを懸念しており、場合によっては、銀行業界と保険業界の違いや規制制度の違いを十分に考慮していない可能性もある。したがって財務省は、FSBが、適切な場合には、保険関連の問題についてIAISの専門知識をより有効に活用すべきだと考えている。保険関係者の懸念が十分に評価されるように、財務省は、FSBにおける透明性とステークホルダー関与の強化、州ベースの米国保険規制制度と整合的な基準と原則の提唱も行う。
IAISについては、「IAISが既存の組織に対する将来の組織変更を考慮する限りにおいて、財務省はこれらの変更はIAISメンバー間で適切かつ地理的にバランスの取れた代表と委員会のリーダーシップを確保する方法で行われることを勧告する。」としている。
勧告
IAISが既存の組織に対する将来の組織変更を考慮する限りにおいて、財務省はこれらの変更はIAISメンバー間で適切かつ地理的にバランスの取れた代表と委員会のリーダーシップを確保する方法で行われることを勧告する。
透明性の確保のために、IAISに対して「ステークホルダーをさらに深く関与させるために、直接と電話会議の両方で、ステークホルダー・ワークショップと情報セッションの活用の拡大を提唱していく。」としている。
勧告
IAISはステークホルダーの透明性を向上させるための最初の一歩を踏み出したが、財務省はIAISの意思決定への透明性とステークホルダーの情報をさらに高めるために、IAISが追加措置を講じることを勧告している。財務省は、IAISの米国メンバーが、国際基準開発プロセスにおいて、透明性と協調を強化することを共同で支持するよう、引き続き奨励する。具体的には、財務省は、ステークホルダーをさらに深く関与させるために、直接と電話会議の両方で、ステークホルダー・ワークショップと情報セッションの活用の拡大を提唱していく。
(2017年11月27日「基礎研レポート」)
中村 亮一のレポート
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