2014年12月05日

アジアビジネスと人的資源-今後、ビジネス上重要度を増すのは「ベトナム」、「インドネシア」、「インド」

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき

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日本生命保険(相)とニッセイ・リース(株)は「ニッセイ景況アンケート調査(2014年度上期調査(2014年8月実施、回答企業数4,285社))」を実施し(当社が集計・分析を担当)、特別調査項目として「アジアビジネスと人材のグローバル化」として、各企業の考え方や取組みを調査した。

1―企業経営でのアジアビジネス

1│アジアビジネスの重要度は全体5割、製造業では7割が「増している」

特別調査によると、アジアビジネスの重要度は、「増している」が22.7%、これに「どちらかというと増している」を合わせた「増している」の合計では45.8%であった[図表1]。同様に、製造業では重要度が「増している」割合の合計は67.0%に達した。「事業の展開上、係わりがない」、「無回答」を除いた、事業の展開上何らかの係わりがある企業(49.1%)のうち、上記の「増している」の合計は93.3%となった。このように、“係わりのある企業”のみを抽出した場合、製造業、非製造業とも9割以上の企業は、ビジネスの重要度が「増している」と回答している。




2│重要度が増している最大の理由は「現地の市場の成長性・有望度の高さ」

前掲の1-1|において、アジアビジネスの重要度が「増している」、「どちらかというと増している」と回答した企業(全体45.8%)において、アジアビジネスの重要度が増している最大の理由は、「現地の市場の成長性・有望度の高さ」が40.7%と全体の4割を占め、次いで「製造拠点として」が16.7%、「製品・部品の調達先として」が12.0%と続いた[図表2]。




3│今後、ビジネス上重要度が増す国・地域は「ベトナム」、「インドネシア」、「インド」

アジア諸国の中でビジネスの視点から重要である国・地域(上位8つの国・地域)をみると、現状では「中国」が35.1%、次いで「タイ」が16.9%、「台湾」が11.4%と、従来の中国への一国集中の様相から変化し、国・地域の多様化、分散化が見られた[図表3]。1~3年後有望視している国・地域では、「中国」(25.6%)が引き続きトップとなったが、その割合は大幅に低下している。一方、「タイ」(15.8%)は現状に続いて中国に次ぐ上位を維持し、「インドネシア」は現状から有望度が上昇した(14.1%)。
   上位8つの国・地域の中で、現状より1~3年後の重要度が上昇している国・地域は順に「ベトナム」(3.9pt)、「インドネシア」(3.4pt)、「インド」(3.3pt)である。




2―アジアビジネスと人的資源

1│人材に関する課題が顕在化

アジアビジネスでの現状を含め今後の課題は、「自社の海外人材の確保・育成」が27.8%と最も高く、次いで「同業他社との価格競争力」が14.2%、「原材料・製品の価格や調達コストの上昇」が13.6%となった。
   また、アジアビジネスの重要度が「増している」と回答した企業(全体の22.7%)に絞って、その課題をみると、「自社の海外人材の確保・育成」が59.6%、次いで「現地の管理職・技術系人材の採用や確保」が31.2%と、人材に関する課題がより顕在化した[図表4]。
   課題を「自社の海外人材の確保・育成」、「同業他社との価格競争力」とする割合の高い業種には、「輸送用機器」(55.3%)、「一般機械・精密」(46.4%)など高度な技術の習得や開発能力が求められる業種が並んだ[図表5]。また、課題を「原材料・製品の価格や調達コストの上昇」とする割合が高い業種には「繊維・衣服」(36.4%)といった人件費の上昇の影響を受けやすい業種が並んだ。




2│海外人材の確保・育成での取組み

海外人材の確保・育成への取組みについて、アジアビジネスの重要度が「増している」と回答した企業に絞ってみると、「若手社員の海外派遣や海外研修」(34.3%)、「語学やグローバル業務に必要な研究の実施」(31.0%)、「現地拠点における現地人材の採用」(27.2%)と、それぞれおよそ3割の企業が実施をしている[図表6]。




3―今後の重点取組み

今後、人材のグローバル化を進めるにあたって、重視する取組みについては、「現地拠点での社員の採用や現地化の強化」が13.7%で最大、「社内でのグローバル人材の成功例やキャリアパスの明確化」が12.5%となった。
   アジアビジネスの重要度が「増している」と回答した企業(全体の22.7%)に絞って、今後重視する取組みをみると、上掲の「現地拠点での社員の採用や現地化の強化」が34.8%、「社内のグローバル人材の成功例やキャリアパスの明確化」が31.6%とその重要度は高くなった。また、上掲の2つの取組みに次いで、「本社の現地の問題に対する理解・キャッチャー機能の見直し」(24.8%)が挙げられており、グローバル化が進展する過程で、課題についても次のステージに昇華している点がうかがえた[図表7]。




 

 
 1 回答企業4285社の属性としては、業種別で製造業が全体の37.2%、非製造業が59.9%である。企業規模別では中小企業が全体の60.3%、中堅企業が24.9%、大企業が14.0%となっている。

(2014年12月05日「基礎研マンスリー」)

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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき (かたやま ゆき)

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

経歴
  • 【職歴】
     2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
     (2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
     ・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
     (2019~2020年度・2023年度~)
     ・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
     ・千葉大学客員教授(2024年度~)
     ・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
     日本保険学会、社会政策学会、他
     博士(学術)

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