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確定拠出年金の中小企業への普及が遅れている一つの要因は60歳まで引き出しができないことである。多くの企業年金の前身は退職一時金である。ところが、退職一時金を確定拠出年金に転換した途端に、従業員は退職しても自由に使えなくなる。
60歳まで引き出しを認めない根拠は、老後の所得保障を目的に掛け金の非課税(所得税の課税繰り延べ)が認められていることにある。引退前に引き出されるのであれば、税制優遇の意味がないという。加えて退職時の支給に退職所得控除を適用するなら、所得税が事実上課税されなくなる点に配慮しているのかもしれない。
しかし、何があっても引き出しができないのでは、制度導入を躊躇してしまう。失業や生活保護の受給を迫られるような困窮、高額の医療費支出、さらに住宅取得など一定の場合には引き出しを認めるべきだろう。ペナルティとしては、60歳以前の支給時にはこれまで通り、給与あるいは一時所得として課税することが考えられる。
厚生年金基金の解散など、中小企業の企業年金は後退しつつある。普及率を回復させるため、中途引き出しの条件を早期に整備すべきである。
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