2014年01月10日

アジアの有力企業の国際事業展開とグローバル人材の育成について-タイ・サイアムセメントグループの事例

平賀 富一

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■要旨

アジア新興国経済のグローバルな位置づけが益々増大化する中、国際事業展開を図るアジアの有力企業が出現しており、それら企業ではグローバル人材の育成・活用が重要なテーマになりつつある。

アジア経済の発展を理解する上では、地場有力企業の状況を考察することが重要であり、タイの最有力企業の一つであるサイアム・セメント・グループ(SCG)を事例として、国際展開の状況やグローバル人材の育成に関する取組みの重要点を調査・分析した。

SCGはタイ国王の命により設立された名門企業としての出自とタイ国内市場での大きな位置づけを有する企業であるが、タイの近代的製造企業のパイオニアとして様々な先進的・自主的な取組みを行い、アジア通貨・金融危機時など経営上の困難を乗り越えて成長し経営近代化に注力してきた。それらを実現する上で、優れた組織学習能力に加え、そのベースとして、先見的に市場環境の変化を見通し必要な経営改革と実行を行なう有能な専門的経営者など優れた人材を育成するメカニズムを持ち、実際にそれら有能人材を輩出してきたことが大きな競争優位であると考えられる。

アセアンを中心とする同社の国際展開については、グローバルな大手企業や地場企業との競合が大きな課題になろうが、同社は、役員候補者・マネージャー等の欧米一流校などへの積極的な派遣等によりグローバル人材の育成努力を行っている。さらに、国際化に当たっての人材プール(タイ人とそれ以外の各国人スタッフ)の拡大、語学力(特に英語)の強化、異文化コミュニケーション力の向上などへの取組みが重要であると思われる。他方、アジア等新興国の経済や企業の発展が、先進国の歴史や経験、知識などを踏まえ、プロセス圧縮的に急速にキャッチアップすることが可能になるとのメリット(後発性の利益)の人材育成・活用面における進展状況・成果も注目すべきと考えられる。

(2014年01月10日「基礎研マンスリー」)

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