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- さあ総選挙 若者よ投票に行こう!―世代別一票の重みの格差是正―
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第46回衆議院議員総選挙の公示が、12月4日に行われました。これから16日の投票日に向けて、いよいよ選挙モード一色ですが、懸念されてきた若者の選挙離れの問題は改善されるのでしょうか。
図表1にあるとおり、若者の投票率は、データのさかのぼれる1967年の第31回衆院選以降、一貫して他の世代を下回る状況にあります。特に、20歳代の投票率については、1967年時点では、全体平均投票率73.99%に対して66.69%であり、その差は7.30ポイントだったのですが、近年は平均に対して20ポイント超の大きな乖離が続いていました。
前回の2009年の総選挙の投票結果を見ましても、20・30歳代の投票率は改善を示したものの、残念ながら他の世代の投票水準との乖離はまだまだ大きい状況(20歳代の投票率49.45%、平均との乖離19.83ポイント)です。
この低い投票率状況を評して、『若者は投票に行かないから、政治に意見が反映されない』と言われています。しかし、その一言で事態を切り捨てて良いのでしょうか。本当に、若者の投票率さえ上げれば、若者の意見は政治に反映されるのでしょうか。
実は、日本の有権者の年齢別構成は、戦後70年の間に激変しているのです。図表2のとおり、満20才以上の男女を有権者と定めた普通選挙制度発足当時の1950年は、若者(20・30歳代)が有権者人口の過半数(53.5%)を占めており、政治は若者の声に大きく耳を傾けていたものと推察されます。しかしながら、現在ではそのウェイトは30.6%に過ぎず、若者・壮年・老年の3区分では、最も少数勢力となってしまいました。今後もこの傾向は進み続け、今の子供たちが20・30歳代となる2030年には、若者の影響力は23.5%まで低下してしまいます。
若者の影響力の劇的な減少と将来に向けた更なる低下が現実である以上、この世代別不均衡の拡大状況を放置しておくことは、もはや許されません。この状況を放置したままでは、ますます若者の選挙離れが加速し、社会や政治に対する期待や信頼が荒廃していく恐れもあります。
世代別一票の重みの格差是正問題は、単に若者の投票率改善を図れば解決できる段階はとうに過ぎており、「20歳以上全員一人一票」という現行選挙制度自体の是非も含めた議論を要する時期に来ているのだと思います。人類が始めて経験する、『超高齢社会における選挙制度のあり方』という大きなテーマへの対応が迫られているのかもしれません。
さあ、総選挙です。この国の未来を決める選択です。そして、選択される未来の影響を、これから最も長く生きていく若者のみなさんが、最も長く大きく受けていくのです。だからこそ、若者全員で投票に行って、若者の世代が投票率トップを獲得してください。
選挙権は、付与される権利でありますが、付与されたからには、それを行使するのは義務であるとも考えられます。権利の行使すら行わない若者たちが、権利格差是正の要求を行っても、耳を傾けてくれる人は少ないでしょう。
若者のみなさんが実際に投票行動を起こしてこそ、初めて『若者は投票しても、政治に意見が反映されない』と、堂々と主張できるのでしょう。そして、この主張を契機として、『超高齢社会における選挙制度のあり方』について、国民的議論がスタートすることを望んでおります。
(2012年12月04日「研究員の眼」)
中村 昭
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