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コラム
2012年03月28日
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東日本大地震による地殻変動で、日本列島の地震活動が活発化している。3.11の地震・津波と原発事故の恐怖を経験した企業や消費者の意識は大きく変化し、企業活動や消費において防災と節電・省エネが重要なキーワードとなった1 。そのような中、「大震災を乗り越え、日本の再生を牽引する」と銘打って東京都が発表した『2020年の東京』計画には、”耐震化100%”、”東京産電力300万kW創出”、”スマートシティ”、” アジアのヘッドクォーター”など、都市防災の高度化や自立・分散型エネルギー社会の創出、都市の魅力度・国際競争力の向上を狙う意欲的なプロジェクトが並んだ。
東京都は、大規模事業所に温暖化ガス排出量削減を義務付けるなど都市の環境対策で国より先行していたが、奇しくも昨年の地震発生直前には、「緊急輸送道路沿道建築物耐震化推進条例」を都議会が可決するなど防災対策でも先進自治体である2 。最近では、都内全企業に3日分の防災備蓄を求める条例の制定や、大地震でも居住可能なマンションの認定制度の創設も打ち出した。原発事故を受けた東京電力の値上げ要請に対しては一層の合理化努力と説明責任を強く求める一方、被災3県で発生したがれきを受け入れている数少ない地方自治体のひとつでもある。震災後1年を経てもなおエネルギー政策の方向性すら明確に示すことができない政府を尻目に、東京では企業と家庭と地方自治体が3.11後の新たな社会づくりに向けて自律的に動き出している。
それだけに、地方都市を訪れて気になるのは、防災やエネルギー問題に対する危機感や取り組み姿勢の温度差だ。特に、九州や関西では当面の電力供給に危機感はあっても、将来の大規模地震や津波、原発事故に対する危機意識は東日本ほど強くないように思われる。被災地からの距離や震災体験の有無、首都と地方都市、本店経済と支店経済などの差であるのか、オフィスビルや住宅、都市における防災や節電・省エネの取り組みを見ても、東京が遥かに先行してしまった感がある。全国どこに住んでも巨大地震のリスクと電力問題などから逃れられない以上、首都直下型地震を恐れて土地勘のない地方都市に避難するより、企業と家庭と地方自治体が競ってリスク対応力を磨く東京に止まる方が安全ではないかと思えるほどだ。地震やエネルギー問題に止まらず、少子高齢化、世界との経済競争などに智恵を絞って懸命に立ち向かおうとしている”Tokyo”は、地方都市やアジア新興国より一歩先を行く「課題解決先進都市」ではないか。今後も官民が持続可能な都市づくりを目指してまい進するなら、ことさらアジアヘッドクォーター特区を設けなくとも、海外企業やビジネス客、研究者、投資マネーの流れは自動的に”Tokyo”に向かうはずだ。
(注)不動産経済研究所『不動産経済ファンドレビュー』2012年3月25日号に寄稿した内容を加筆修正したものです。
東京都は、大規模事業所に温暖化ガス排出量削減を義務付けるなど都市の環境対策で国より先行していたが、奇しくも昨年の地震発生直前には、「緊急輸送道路沿道建築物耐震化推進条例」を都議会が可決するなど防災対策でも先進自治体である2 。最近では、都内全企業に3日分の防災備蓄を求める条例の制定や、大地震でも居住可能なマンションの認定制度の創設も打ち出した。原発事故を受けた東京電力の値上げ要請に対しては一層の合理化努力と説明責任を強く求める一方、被災3県で発生したがれきを受け入れている数少ない地方自治体のひとつでもある。震災後1年を経てもなおエネルギー政策の方向性すら明確に示すことができない政府を尻目に、東京では企業と家庭と地方自治体が3.11後の新たな社会づくりに向けて自律的に動き出している。
それだけに、地方都市を訪れて気になるのは、防災やエネルギー問題に対する危機感や取り組み姿勢の温度差だ。特に、九州や関西では当面の電力供給に危機感はあっても、将来の大規模地震や津波、原発事故に対する危機意識は東日本ほど強くないように思われる。被災地からの距離や震災体験の有無、首都と地方都市、本店経済と支店経済などの差であるのか、オフィスビルや住宅、都市における防災や節電・省エネの取り組みを見ても、東京が遥かに先行してしまった感がある。全国どこに住んでも巨大地震のリスクと電力問題などから逃れられない以上、首都直下型地震を恐れて土地勘のない地方都市に避難するより、企業と家庭と地方自治体が競ってリスク対応力を磨く東京に止まる方が安全ではないかと思えるほどだ。地震やエネルギー問題に止まらず、少子高齢化、世界との経済競争などに智恵を絞って懸命に立ち向かおうとしている”Tokyo”は、地方都市やアジア新興国より一歩先を行く「課題解決先進都市」ではないか。今後も官民が持続可能な都市づくりを目指してまい進するなら、ことさらアジアヘッドクォーター特区を設けなくとも、海外企業やビジネス客、研究者、投資マネーの流れは自動的に”Tokyo”に向かうはずだ。
(注)不動産経済研究所『不動産経済ファンドレビュー』2012年3月25日号に寄稿した内容を加筆修正したものです。
(2012年03月28日「研究員の眼」)
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