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- 養老保険全額損金プランの個人所得税課税に関する最高裁判決
コラム
2012年01月19日
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2012年1月13日および1月16日、法人契約養老保険の個人所得税課税に関する最高裁判決が示された。
法人が保険契約者となり、死亡保険金受取人を法人、満期保険金受取人を役員とする養老保険契約に関し、支払保険料の2分の1を役員報酬として損金処理(役員については給与として課税)し、2分の1を保険料として損金処理したケースについて、役員の満期保険金受取(一時所得として課税される)に当たっての必要経費は、支払保険料全額ではなく、個人が負担したものと考えられる支払保険料の2分の1相当分である旨が判示された(なお、1月13日判決分は、支払保険料の2分の1が役員報酬ではなく役員に対する貸付金として経理処理されているが、その部分のみが個人が負担したものといえるとしている)。
国税庁長官が制定した法人税基本通達には、法人契約養老保険について、養老保険に係る保険料(9-3-4)として、
(1)死亡保険金および満期保険金(法人税基本通達では生存保険金)の受取人が法人である場合は、支払保険料は資産計上し、
(2)死亡保険金および満期保険金の受取人が被保険者または被保険者の遺族である場合は、支払保険料は被保険者である役員または使用人の給与とし、
(3)死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、満期保険金の受取人が法人である場合は、支払保険料の2分の1相当額は(1)により資産計上し、2分の1相当額は損金に算入する(ただし、役員または特定の使用人のみを被保険者としている場合には、2分の1相当額は被保険者である役員または使用人の給与とする)
と定められているが、最高裁判決のケースでの受取人形態((3)の受取人形態の逆パターン)についての定めはない。
(3)については、『コンメンタール法人税法』には、養老保険の支払保険料のうち2分の1を満期保険金支払のための積立保険料、2分の1を死亡保険金支払のための危険保険料と捉え、法人が受取人である満期保険金部分を資産計上、被保険者の遺族が受取人である死亡保険金部分を定期保険の保険料の取扱に準じて損金算入する(ただし、役員または特定の使用人のみを被保険者としている場合には、特定の者に対して経済的な利益を供与していることとなるので給与)と説明されている。
一方、最高裁判決のケースでの受取人形態についての法人の経理処理は、こうした考え方を踏まえ、法人が受取人である死亡保険金部分を定期保険の保険料の取扱に準じて損金計上、被保険者である役員が受取人である満期保険金部分を役員報酬として損金算入したものであろう(結果として法人の支払保険料が全額損金となることから「全額損金プラン」と称されているようである。両最高裁判決とも、こうした経理処理は支払保険料のうち2分の1が役員が支払を受けるべき満期保険金の原資となり、残り2分の1が法人が支払を受けるべき死亡保険金の原資となるとの前提でされたものと解されるとしている)。
両最高裁判決とも、個人の所得税計算については、「一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう『その収入を得るために支出した金額』に該当するためには、それが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえる場合でなければならないと解するのが相当である」として、必要経費は支払保険料全額ではなく、個人が負担したものと考えられる支払保険料の2分の1相当分であると結論したもので、1月13日最高裁判決の須藤正彦裁判官の補足意見で示された、「法人税額算出に当たって損金経理されるという方法で保険料のうち非課税とした半額部分を、更に所得税額算出に当たっても控除されるべき金額として扱い、そのことによって重ねて非課税とする結果を生じさせる」不合理を回避する、妥当な判決といえよう。
法人が保険契約者となり、死亡保険金受取人を法人、満期保険金受取人を役員とする養老保険契約に関し、支払保険料の2分の1を役員報酬として損金処理(役員については給与として課税)し、2分の1を保険料として損金処理したケースについて、役員の満期保険金受取(一時所得として課税される)に当たっての必要経費は、支払保険料全額ではなく、個人が負担したものと考えられる支払保険料の2分の1相当分である旨が判示された(なお、1月13日判決分は、支払保険料の2分の1が役員報酬ではなく役員に対する貸付金として経理処理されているが、その部分のみが個人が負担したものといえるとしている)。
国税庁長官が制定した法人税基本通達には、法人契約養老保険について、養老保険に係る保険料(9-3-4)として、
(1)死亡保険金および満期保険金(法人税基本通達では生存保険金)の受取人が法人である場合は、支払保険料は資産計上し、
(2)死亡保険金および満期保険金の受取人が被保険者または被保険者の遺族である場合は、支払保険料は被保険者である役員または使用人の給与とし、
(3)死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、満期保険金の受取人が法人である場合は、支払保険料の2分の1相当額は(1)により資産計上し、2分の1相当額は損金に算入する(ただし、役員または特定の使用人のみを被保険者としている場合には、2分の1相当額は被保険者である役員または使用人の給与とする)
と定められているが、最高裁判決のケースでの受取人形態((3)の受取人形態の逆パターン)についての定めはない。
(3)については、『コンメンタール法人税法』には、養老保険の支払保険料のうち2分の1を満期保険金支払のための積立保険料、2分の1を死亡保険金支払のための危険保険料と捉え、法人が受取人である満期保険金部分を資産計上、被保険者の遺族が受取人である死亡保険金部分を定期保険の保険料の取扱に準じて損金算入する(ただし、役員または特定の使用人のみを被保険者としている場合には、特定の者に対して経済的な利益を供与していることとなるので給与)と説明されている。
一方、最高裁判決のケースでの受取人形態についての法人の経理処理は、こうした考え方を踏まえ、法人が受取人である死亡保険金部分を定期保険の保険料の取扱に準じて損金計上、被保険者である役員が受取人である満期保険金部分を役員報酬として損金算入したものであろう(結果として法人の支払保険料が全額損金となることから「全額損金プラン」と称されているようである。両最高裁判決とも、こうした経理処理は支払保険料のうち2分の1が役員が支払を受けるべき満期保険金の原資となり、残り2分の1が法人が支払を受けるべき死亡保険金の原資となるとの前提でされたものと解されるとしている)。
両最高裁判決とも、個人の所得税計算については、「一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう『その収入を得るために支出した金額』に該当するためには、それが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえる場合でなければならないと解するのが相当である」として、必要経費は支払保険料全額ではなく、個人が負担したものと考えられる支払保険料の2分の1相当分であると結論したもので、1月13日最高裁判決の須藤正彦裁判官の補足意見で示された、「法人税額算出に当たって損金経理されるという方法で保険料のうち非課税とした半額部分を、更に所得税額算出に当たっても控除されるべき金額として扱い、そのことによって重ねて非課税とする結果を生じさせる」不合理を回避する、妥当な判決といえよう。
(2012年01月19日「研究員の眼」)
小林 雅史
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