- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 健保組合制度の危機的状況
本年4月、健康保険組合連合会により2011年度の予算集計が発表された。健保組合全体の赤字幅は前年比1割ほど縮小するものの、それでも6千億円に上る見込みである。しかもこの数字は3月に起きた東日本大震災の影響を織り込んでいない。健保組合制度未曾有の危機と言われる所以である。
大企業雇用者を中心に構成される健保組合は、老人医療費負担の影響で94年には赤字化し、その後2002年には赤字が約4千億円にまで達した。その後被保険者負担の拡大などの手を打ち、2003年から2007年にかけては黒字基調を維持してきたが、2008年以降、後期高齢者(75歳以上)医療への拠出及び国保支援としての前期高齢者(65~74歳)医療への大幅な負担増が響き、赤字に逆戻りしている。
現役世代の負担減を目指して導入された後期高齢者医療制度ではあったが、現状では皮肉な結果となっていると言わざるを得ない。「国保に較べ恵まれ過ぎていた」企業健保に応分の負担を求めたという意見を考慮に入れても、その負担に耐え兼ね、保険料を引き上げたり、それも及ばず解散して政府管掌健保へと移行する組合が後を絶たない現状では、制度としての存続そのものが危ぶまれる。
予算段階での赤字見込みに直面し、各健保組合も、限られた広報費の中で組合員への健康注意喚起を強化したり、症例基準を緩和して定期健診での再検査数を減らすといった、涙ぐましい「工夫」を凝らしているが、不況下のリストラや賃金抑制による収入減と、高齢化・震災による医療費増大という現実の前では、「焼け石に水」といった状況にある。
このレポートの関連カテゴリ
米澤 慶一
研究・専門分野
ソーシャルメディア
新着記事
-
2022年06月27日
資金循環統計(22年1-3月期)~個人金融資産は2005兆円と2000兆円の大台を維持、企業の現預金は過去最高、海外勢が日本国債売り -
2022年06月27日
欧州保険会社が2021年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(1)-全体的な状況報告- -
2022年06月27日
不妊症につながる男性疾患とは?(2)-約3割を占める男性不妊のリスク低減には精索静脈瘤の早期発見と、生活習慣病予防が重要- -
2022年06月27日
不妊症につながる女性疾患とは?(1)-約6割を占める女性不妊のリスク低減には、月経不順、性感染症、子宮内膜症等への早期対応が重要- -
2022年06月24日
国民からみるCBDC導入の意味-国民負担と社会的便益
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2022年05月17日
News Release
-
2022年04月21日
News Release
-
2022年04月04日
News Release
【健保組合制度の危機的状況】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
健保組合制度の危機的状況のレポート Topへ