コラム
2010年03月18日

課徴金制度と金融庁による審判

小林 雅史

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

近年、「証券取引等監視委員会、インサイダー取引の疑いで○○万円の課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告」等の新聞報道が多く見受けられる。

実際に、金融庁のホームページでは、2009年度の課徴金納付命令等は46件と(2009年3月16日現在)、2008年の18件から大幅に増え、2007年の31件も上回る状況にある。

課徴金制度とは、市場の公正性・透明性を確保するため、金融商品取引法や公認会計士法に違反した場合(金融商品取引法では、インサイダー取引・相場操縦等の不公正取引、有価証券届出書等の不提出・虚偽記載等、公認会計士法では、故意に虚偽等のある財務書類を虚偽等のないものとして証明すること等)、行政上の措置として違反者に対して金銭的負担を課す制度である。

金融商品取引法による課徴金制度については、金融商品取引法および金融商品取引法第六章の二による課徴金に関する内閣府令等により定められており、証券取引等監視委員会が調査を行い、課徴金の対象となる法令違反行為があると認められた場合には内閣総理大臣および金融庁長官に対し勧告が行われる。

これを受け、金融庁長官は審判手続開始決定を行い、3人の合議体による審判官(うち1名が審判長)による審判手続[違反事実等の存在を主張・立証する金融庁長官から指定された指定職員、法令違反行為があるとされた被審人(およびその代理人である弁護士等)が参加]を経た上で、審判官の過半数による合議で決した、審判事件についての決定案が金融庁長官に提出され、金融庁長官がこの決定案に基づき決定を行う。

この決定に不服がある場合は、被審人は決定後30日以内に課徴金納付命令決定の取消しの訴えを提起する必要がある。

審判手続開始が決定された場合、被審人は遅滞なく答弁書を審判官に提出する必要があるが、この答弁書において法令違反行為の事実等を認めた場合には、審判が開催されないことがある。

金融庁のホームページによれば、2009年3月16日現在で審判手続中の審判事件は3件であり、審判の傍聴も可能であることから、そのうち1件の第6回目の審判(3月17日)を傍聴した。

審判手続は金融庁審判廷で行われ、向かって正面に3人の審判官、左側に指定職員(7人)、右側に被審人の代理人(4人)が着席し、後方には報道機関席、傍聴席がある。

傍聴希望者が多数の場合は抽選が行われるが、今回は46席の傍聴席に対し25名の傍聴希望者であったので、全員傍聴できた。

審判官入廷、報道機関による撮影を経て、審判長による開廷の後、指定職員による主張、被審人の代理人による主張が行われ、審判長により審判手続の終了が宣告された(この間およそ1時間)。

当該審判事件については、前例の少ない審判で事実関係が争われている事案であり、今後、金融庁長官による決定が行われることとなるが、公正な取引確保のための審判制度全般の動向等について引き続き注視していきたい。
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

小林 雅史

研究・専門分野

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【課徴金制度と金融庁による審判】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

課徴金制度と金融庁による審判のレポート Topへ