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コラム
2009年11月06日
100年に1度といわれた金融危機と世界同時不況を象徴するリーマンショックから1年足らずで、わが国では50年に1度の政権交代が起こった。経済と政治のあまりに急激な変化と、過去の延長線上にない未来を前に、不安を募らせる向きも少なくないようだ。しかし、われわれは、むしろこれを奇禍として、人口減少・高齢化・グローバル経済化を前にしても構造改革を先送りしてきた事なかれ主義や既成概念から脱し、日本の持続的成長のために未来志向で新しいアクションを起こすべきではないだろうか。
不動産ビジネスの分野においても、過去のセオリーやパラダイム(考え方の枠組み)にとらわれない新しい市場開拓の動きが目立ってきた。たとえば、鳩山由紀夫首相が国連で表明した「温暖化ガス25%削減」という大胆な中期目標には、一部産業界から猛反発が起きているが、これを「100年に1度のビジネスチャンス」と捉える設計事務所や設備機器会社もある。環境ビジネスを新たな収益源にしようと環境本部を新設したり、輻射空調システムや窓面の太陽電池パネル、照明システムの見直しなどで平均的なビルに対してCO2排出量を50%削減できる本社ビルを建設したりするなど、環境規制強化による新市場の創出を先取りする大手建設会社もある。省エネと生産性向上を目的に、新しいオフィス空間と働き方を提案する不動産会社も話題だ。また、義務的な屋上緑化を超えて、建物の外壁を美しく演出する壁面緑化技術も日進月歩である。
政権交代で公共事業は維持管理に重点が移ると思われるが、民間の不動産ストックでは、すでにマンション専有部の定価リフォームから1棟や団地丸ごと改修、オフィスビルの耐震・省エネ改修など、異業種も参入して、機能更新・価値再生ビジネスが拡大している。「新築より改修の方が、工夫と智恵が必要」という意見もあり、改修ビジネスの広がりが新たな技術やノウハウの開発に繋がる可能性もある。
分譲マンションの管理業界では統合・再編が行われているが、住生活総合サービスを掲げ、従来の共用部管理に加えて専有部サービス市場を開拓する動きが勢いづいてきた。また、居住者の利便性向上を目的に、分譲マンションや賃貸マンション、アパートで、カーシェアリングの導入例が増えつつあるが、将来的には電動アシスト付きレンタサイクルと同様、集合住宅の標準装備となりそうだ。安普請のアパート経営から脱し、戸建賃貸住宅の開発や、二世帯住宅・賃貸住宅併設でオーナーと借り手双方の満足度を高めるアイデアも注目される。
マンションやオフィスビルでは省エネ技術以外にも、地震の長周期振動への対策や、建物の長寿命化、超高強度コンクリートなどの技術開発が進む。「超長期住宅先導的モデル事業」は、新たな要素技術開発の契機となったが、マンション設計の固定概念を打ち破り、国際規格となりうるような様々な新しい建築構法や技術を提案する建設会社も出てきた。
以上のさまざまな取り組みから、不動産市場の活性化に向けた新しい不動産ビジネスのキーワードをまとめると、(1)省エネ・環境負荷低減、(2)フローからストックへ、(3)所有から利用へ、(4)生活者指向、(5)これらを支える新技術の開発、となるだろう。これらは、人口減少・高齢化・グローバル経済化が一層進むわが国において、持続的成長を図るためのキーワードとも重なる部分が多い。いずれにしても、危機こそチャンスであり、旧秩序の崩壊が未来のためのイノベーションの苗床となることを期待したい。
不動産ビジネスの分野においても、過去のセオリーやパラダイム(考え方の枠組み)にとらわれない新しい市場開拓の動きが目立ってきた。たとえば、鳩山由紀夫首相が国連で表明した「温暖化ガス25%削減」という大胆な中期目標には、一部産業界から猛反発が起きているが、これを「100年に1度のビジネスチャンス」と捉える設計事務所や設備機器会社もある。環境ビジネスを新たな収益源にしようと環境本部を新設したり、輻射空調システムや窓面の太陽電池パネル、照明システムの見直しなどで平均的なビルに対してCO2排出量を50%削減できる本社ビルを建設したりするなど、環境規制強化による新市場の創出を先取りする大手建設会社もある。省エネと生産性向上を目的に、新しいオフィス空間と働き方を提案する不動産会社も話題だ。また、義務的な屋上緑化を超えて、建物の外壁を美しく演出する壁面緑化技術も日進月歩である。
政権交代で公共事業は維持管理に重点が移ると思われるが、民間の不動産ストックでは、すでにマンション専有部の定価リフォームから1棟や団地丸ごと改修、オフィスビルの耐震・省エネ改修など、異業種も参入して、機能更新・価値再生ビジネスが拡大している。「新築より改修の方が、工夫と智恵が必要」という意見もあり、改修ビジネスの広がりが新たな技術やノウハウの開発に繋がる可能性もある。
分譲マンションの管理業界では統合・再編が行われているが、住生活総合サービスを掲げ、従来の共用部管理に加えて専有部サービス市場を開拓する動きが勢いづいてきた。また、居住者の利便性向上を目的に、分譲マンションや賃貸マンション、アパートで、カーシェアリングの導入例が増えつつあるが、将来的には電動アシスト付きレンタサイクルと同様、集合住宅の標準装備となりそうだ。安普請のアパート経営から脱し、戸建賃貸住宅の開発や、二世帯住宅・賃貸住宅併設でオーナーと借り手双方の満足度を高めるアイデアも注目される。
マンションやオフィスビルでは省エネ技術以外にも、地震の長周期振動への対策や、建物の長寿命化、超高強度コンクリートなどの技術開発が進む。「超長期住宅先導的モデル事業」は、新たな要素技術開発の契機となったが、マンション設計の固定概念を打ち破り、国際規格となりうるような様々な新しい建築構法や技術を提案する建設会社も出てきた。
以上のさまざまな取り組みから、不動産市場の活性化に向けた新しい不動産ビジネスのキーワードをまとめると、(1)省エネ・環境負荷低減、(2)フローからストックへ、(3)所有から利用へ、(4)生活者指向、(5)これらを支える新技術の開発、となるだろう。これらは、人口減少・高齢化・グローバル経済化が一層進むわが国において、持続的成長を図るためのキーワードとも重なる部分が多い。いずれにしても、危機こそチャンスであり、旧秩序の崩壊が未来のためのイノベーションの苗床となることを期待したい。
(2009年11月06日「研究員の眼」)
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