2009年03月25日

米国の株価・住宅価格の予測可能性:グリーンスパンFRB議長の時代

上智大学経済学部 教授 竹田 陽介

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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本研究は,1987年の「ブラック・マンデー」,2000年から2001年にかけて破裂した「ITバブル」,2006年をピークとし、サブプライム・ローン危機を招いた「住宅バブル」など,資産バブルの存在が金融システムに大きな影響を及ぼしてきた株価および住宅価格に関して,米国FRBが予測可能であったかどうかについて実証的に明らかにする.グリーンスパン前議長及びバーナンキ現議長の採る「グリーンスパン主義」は,中央銀行が資産価格の動向にバブルの気配を不完全にしか看守することができないことを前提とする.資産価格の予測可能性について本研究は,一変量の推定法(Campbell and Shiller, 1988(a); 1988(b); 2001)及び多変量の推定法(Cochrane, 1994 ; 2001)を米国における株式のS&P500指数,及び住宅価格の代理変数としてのREIT価格指数に適用する.配当‐価格比率の配当変化率に対する予測力を示唆する効率市場仮説,及び配当‐価格比率の資産価格変化率に対する予測力を意味するCochrane(2001)のモデル,この二つの仮説から推定結果を解釈した結果,どちらか一方の仮説を明確に支持することはない.株式については,Cochrane(2001)モデルの含意が大まかに妥当する一方,REITを代理変数として用いた住宅については,効率市場仮説と整合的である.また,グリーンスパン前議長の任期中に観察された資産価格の大きな変動(1987年10月のブラック・マンデーの株価暴落,1999年から2000年にかけての.comバブルの時期の株価,2007年6月におけるREIT価格の二桁の下落率を記録する前の高騰)は,推定式の与える予測の95%信頼区間に収まらない.本研究の結論は,金融政策による資産価格の変動の予防的抑止を唱える主張の現実性に疑問を投げかけ,グリーンスパン主義の妥当性を支持する.

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