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利益率、経営戦略、組織構造は企業間で大きな格差が存在する。格差を説明する理論は、産業要因を重視する理論と企業要因を重視する理論に大別される。
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産業要因を重視する理論は、(1)既存企業との競争関係、(2)新規参入の脅威、(3)代替品の脅威、(4)売り手の交渉力、(5)買い手の交渉力という5つの要因が利益率を決定すると考える、Porter(1980)の「ファイブ・フォース」分析が代表的な理論である。この理論では、企業が保有する経営資源の異質性を考慮していないことが大きな特徴となっている。
企業要因を重視する理論(資源ベース理論)は、経営資源が異質でありかつ自由に移動できないことを前提に、競争優位の源泉を経営資源の特徴に求める。持続的な競争優位を可能とする経営資源は、希少で価値があり模倣の難しい経営資源であり、その経営資源を活用できる組織が企業内に存在する場合に競争優位が持続すると考える。
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上記の両理論はいずれも説得力を持つが、それぞれの影響の相対的な大きさは自明ではない。そこで、利益率、経営戦略、組織構造の格差が、上記の産業要因と企業要因についてどのような割合で分解されるかを、分散成分分析(variance component analysis:VCA)とマルチレベル分析(multilevel analysis)によって分析した。
利益率を見ると、変動の約半分を企業要因が占め、産業要因の説明力は8-14%にとどまった。すなわち、利益率については、企業の異質性がより重要な要素であることが明らかとなった。経営戦略の一つである研究開発は、産業要因の説明力が大きく、同一産業に属する企業にあっては、類似の研究開発戦略を追求する傾向があることが判明した。一方、広告・宣伝については、産業要因に比べ企業要因の説明力が大きいことが明らかとなった。組織構造については、約60%が企業要因で説明され、産業要因の説明力は20-25%にとどまった。
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この分析結果は、研究開発戦略を除き、企業要因を重視する資源ベース理論の方がより高い有効性を持つことを確認するものと言える。これを企業経営の立場から見ると、産業という企業にとっての外部要因に眼を向けることはもちろん重要であるが、それ以上に、企業内部の経営資源の有効性を高めることによって持続的な競争優位を確保していくことが、より重要であることを示唆している。
(2008年03月26日「ニッセイ基礎研所報」)
小本 恵照
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