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- 金融市場における景気指標サプライズの影響
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金融市場において効率的市場仮説(efficiency market hypothesis)が成立しているとすれば、市場では「新たな情報(news)」が瞬時に評価され価格に織り込まれることから、新たな情報は市場には影響を及ぼさないことになる。しかしながら、現実の市場では景気指標などの発表が市場の価格形成に影響を与える場合がみられる。一般的に、市場で関心が高い景気指標については、市場参加者により事前に予測が行われ、その平均値として市場コンセンサスが形成される。市場コンセンサスは事前の情報を基に予測されていることから、実績値との乖離である予測誤差については市場で織り込まれていないため、金融市場での価格が大きく変動するのである。本論では、景気指標の予測誤差が金融市場における価格形成にどのような影響を与えているのかについて検証することにある。結論を要約すると、
(1) 予測誤差の実績値に対する過大・過小は景気変動と相関関係が高いものの、予測の分散が過大(過小)から過小(過大)へ向かう局面では予測誤差の分散の拡大はみられるものの、それ以外の時期には大きな差異はみられない。
(2) 2006 年8月のCPI の基準改定後の金融市場での混乱は、市場において基準改定の影響が全くの想定外であったことが原因である。
(3) News の内容を区別しない分析では、景気指標の予測誤差の影響は見極めしがたい。景気指標の予測誤差については、予測と比較してgood news であったのか、bad newsであったのかが重要である。
(4) 本論の推計期間(2000年1月~2006年3月)については、鉱工業生産指数、貿易収支、有効求人倍率がbad news のみと有意な関係にあることがわかる。また、景気指標の公表と同日内の市場価格の変動でみると、第三次産業活動指数、大型小売店販売、貿易収支においてbad news の効果が有意なものとなり、時間の経過とともに影響を与える景気指標の数が増加することがわかる。
(5) good news とbad news は非対称な影響を金融市場に与えていると考えられる。市場では、事前に景気指標の予測のコンセンサスが形成されているとはいえ、不完全なものにとどまっている。その結果、予測を下回る状況(bad news)となった場合、市場の価格形成に大きな影響を与える可能性がある。
(2007年09月26日「ニッセイ基礎研所報」)
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日本大学経済学部教授 小巻 泰之

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