- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 経済データに関する不確実性の影響 -金融ルール(テイラー・ルール)の利用-
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
テイラー・ルールで導かれる金利水準は、概して、現実の政策金利水準との間に乖離が生じている。背離の生じる要因の一つが経済データに関する不確実性であり、その内容と原因を明らかにすることが本論の目的である。本論では、特に、(1)統計の計測上の誤差、(2)推計手法の差異の影響について考える。
統計の計測誤差の影響としてはGDP の影響が最も大きい。しかしながら、資本ストック、資本稼働率の影響も小さくはない。また、80 年代と90 年代では速報段階の統計(データ)と数次の改訂を経た統計(ファイナル・データ)の意味が大きく異なっている。両方の統計を用いてGDP ギャップを推計すると、80 年代はデータによるGDP ギャップは物価、ファイナル・データによるGDP ギャップは供給面の経済変動を表現している。90年代に入ると、データによるGDP ギャップは労働需給の変動を表すようになっている。
推計方法の相違による影響では、時系列的なアプローチを用いると、改訂の大きさがGDP ギャップ水準とほぼ同等となる。しかも、この原因は、GDP などデータの計測誤差の影響ではなく、逐次的な再推計による時系列トレンドの変化の影響が大きい。ただし、生産関数を利用した場合、推計手法で先行研究の改善を加えてみても、データの計測誤差の影響が大きい。また、1次トレンド、2次トレンドでは、データ改訂及び逐次推定の双方の影響が大きい。
したがって、政策の判断は時系列的アプローチで計測したGDP ギャップで行うことは不適切といえる。生産関数によるGDP ギャップの推定が、データの計測誤差を明示的にすることができる他、逐次的な影響を抑えられる計測方法であるといえる。
(2007年03月26日「ニッセイ基礎研所報」)
日本大学経済学部教授 小巻 泰之
日本大学経済学部教授 小巻 泰之のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2017/05/09 | 消費税における軽減税率の効果-景気安定化の観点からの検討 | 日本大学経済学部教授 小巻 泰之 | 基礎研レポート |
2016/05/13 | 労働関連統計にみられる人口減少と高齢化の影響 ~九州地域の場合~ | 日本大学経済学部教授 小巻 泰之 | 基礎研レポート |
2015/07/03 | 消費税増税における「認知ラグ」の影響 | 日本大学経済学部教授 小巻 泰之 | ニッセイ基礎研所報 |
2015/04/21 | 高速交通網整備の地域経済への効果~「陸の孤島」島根県西部地域における公共財の整備~ | 日本大学経済学部教授 小巻 泰之 | 基礎研レポート |
新着記事
-
2025年03月21日
サステナビリティに関する意識と消費者行動2024(2)-消費者はなぜ動かない?エシカル消費の意識・行動ギャップを生み出す構造的要因 -
2025年03月21日
消費者物価(全国25年2月)-コアCPI上昇率は当面3%前後で推移する見通し -
2025年03月21日
米FOMC(25年3月)-市場予想通り、政策金利を2会合連続で据え置き。4月から量的引締めのペースを緩和 -
2025年03月19日
日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント低下の12と予想、トランプ関税の影響度に注目 -
2025年03月19日
孤独・孤立対策の推進で必要な手立ては?-自治体は既存の資源や仕組みの活用を、多様な場づくりに向けて民間の役割も重要に
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【経済データに関する不確実性の影響 -金融ルール(テイラー・ルール)の利用-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
経済データに関する不確実性の影響 -金融ルール(テイラー・ルール)の利用-のレポート Topへ