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1.
本論文では、子会社公開の現状を整理し、子会社公開が親会社や子会社に与える影響を分析した。
2.
全体としてみると、子会社公開に積極的な企業が多く、株式公開される子会社は順調な増加を続けている。これは、資金調達など公開に伴うメリットが、少数株主と親会社との利益相反問題といったデメリットを上回ると判断した企業の多いことが基本的な要因だが、順調な業容拡大を示す子会社が増加したこと、上場基準が緩和されたこと、会計基準が改められ連結対象が拡大されたことなども無視できない影響を与えている。しかし個々の企業の子会社に対する取り組みをみると、最近では株式交換による完全子会社化によって公開子会社の非公開化を進める企業が増えるなど、子会社公開を見直す動きも増加している。
3.
子会社公開が親会社の株価に与える影響については、公開発表前後の3日間で3.1%の累積異常収益率(CAR)が観察されるなど、子会社公開が親会社の株価にプラスの効果を持つことが明らかとなり、子会社公開が親会社の株主価値を高めていることが判明した。しかし、個々の企業のCARにはバラツキがあるため、その原因を回帰分析によって分析した。それによると、企業業績や財務内容の良好な親会社が、持株比率が100%に近い子会社を、子会社自身の新株発行を抑制し、親会社の持株の売却を中心にして株式公開を行う場合に、投資家の評価が高くなることが明らかとなった。
4.
一方、株式公開後の子会社の企業業績や株価の推移をみると、企業業績には目立った変化はなく、株価は同業種の平均株価を大幅に上回るパフォーマンスを示すケースと大幅に下回るケースに二極分化し、全体としてみると株価上昇につながっていないことが明らかとなった。この結果をみる限り、株式公開によるメリットを活かし切れていない子会社が少なくないといえる。
5.
今回の分析結果からみると、子会社公開は親会社の株主価値の増加につながっていると評価されるが、公開後の子会社のパフォーマンスは必ずしも公開時の投資家の期待を満たす内容となっていないものが多いと判断される。株主価値の増大がこれまで以上に重視される中で、親会社と少数株主の利益相反問題も重要性を増すとみられ、今後はより慎重な子会社公開が求められてくると思われる。企業グループや子会社自身の成長にとって、子会社公開が本当に不可欠なものかどうかを慎重に見極めた上で、株式公開の判断を下すことが期待される。
(2001年09月25日「ニッセイ基礎研所報」)
小本 恵照
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