1997年12月25日

構造的色彩が強い百貨店、スーパーの売上低迷

小本 恵照

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■目次

1. 消費マインドの萎縮と食料品・衣料品販売の不振
2. 重要性を増す顧客・販売情報の分析

■introduction

今年に入り百貨店・スーパーの売上不振が深刻化している。 しかし、 より長期的視点に立つと、 売上の低迷は 90 年代を通じて継続している構造的現象ともみられ、 足元の低迷はその傾向がやや強まったものとも考えることができる。 以下では、 長期的視点から消費構造を眺め、 売上低迷の実態を確認するとともに、 今後の百貨店、 スーパー経営に求められる課題について考えてみたい。 まず、 第1点としては、 個人消費全体の低迷があげられる。 90 年代の個人消費の推移をみると、 消費水準はここ数年間ほとんど上昇していない。 これは、 可処分所得は緩やかながら増加傾向をたどる中で、 平均消費性向は持続的に低下してきていることによる面が強い (図表-1)。 すなわち、 所得のうち消費に回す割合が低下し続けているのである。 これは、 バブル崩壊以降の 「右肩上がり経済観」 の消失、 企業のリストラ・倒産、 税金等の国民負担の増大などによって、 所得の上昇期待が鈍化したことが大いとみられる。 将来所得の上昇期待の低下は、 当面の消費を押さえ将来に備えようとする、 消費マインドの萎縮につながっているのである。
第2点としては、 相対的に消費増加率の小さい販売品目の販売構成比が大きいことが挙げられる。 百貨店、 スーパーの販売品目は、 食料品と衣料品関連が約3/4を占めているが (図表-2)、 食料品と衣料品の消費は他の品目に比べ大きく見劣りしている (図表-3)。 特に衣料品については、 90 年代に入ってからの落ち込みが顕著である。 80 年代と 90 年代の品目別の消費増加率を、 消費全体の伸びと比べてみると (図表-4)、 衣料品は 80 年代についてはほぼ消費全体に見合った伸びをみせていたが、 90 年代には約8割の水準にまで低下してきている。 消費マインドの冷え込みの中で、 サービス消費を中心とする生活関連消費や住居関連消費が優先され、 衣料品向け消費を切り詰める傾向が強まってきているのである。

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