1997年06月25日

「内なる国際化」

細見 卓

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産業の空洞化が必至であると騒がれているように、 日本企業の対外投資いわゆる 「国際化」 は非常に顕著なものであり、 アジア諸国においては、 日本からの投資が最大となっている国が多い。 しかしながら、 全体としての、 日本企業の海外生産比率は、 10%程度であり、 西欧諸国が総じて 20 数%あるのに比べれば、 未だしの感がある。 このことは別の面から見れば、 日本がこれだけ貿易を重視している国であっても、 貿易の GNP に対する割合はもっとも低い水準にあることからも推定できる。
つまり、 日本の産業構造は、 まだ世界全体を基盤として事業活動が行われているというには程遠い状況にあり、 日本企業の海外発展にはなお多くの余地が残されている。


アンバランスな国際化が進む日本経済
日本の企業が急激な海外発展と海外投資を続けてきたことは、 まことに顕著なものであり、 日本企業の外へ向かっての国際化、 資本的・人的海外展開は、 まさに大きく開花した。 しかしながら、 日本からの海外投資が一方通行的で、 海外からの対日投資を大きく引き離しているという現実はあいも変わらない。 日本の対外投資が日本の雇用の削減につながるということは、 否定できないことであり、 反対に外国企業が対日投資や企業進出をすれば、 それは日本の産業資源、 なかんずく人的資源の活用となる雇用の増大を招きうるものである。
なぜアンバランスに海外からの対日投資が増加を示さないかについては、 いろいろな要因が言われている。 それらを克服して対日投資を誘引しない限り、 日本の雇用に与える影響は決して軽微ものではなかろう。


克服すべき日本気質
日本の土地が高いため地代・家賃が高いとか、 食料費をはじめ生活諸経費が非常に高いといったことは、 単に外資の誘引策としてだけでなく、 日本人の生活内容の充実からしても大きな問題である。
また一方、 対日投資の障害としては、 日本人の外国語をはじめ国際的なことがらに対する無理解と排他性がよく取り上げられる。 たしかに、 日本人ないし日本社会の外国人に対する配慮は、 交通標識・日常情報等生活面において非常に欠けており、 外国人にとって日本での生活は極めて厳しいものであろうことは容易に推察できる。
それに加え、 漸次改善しつつあるが、 日本人の外国人嫌い、 特にアジア諸国の人々に対する不謹慎な態度というのは、 日本の国際社会における評価をひどく下げていることは言を俟たない。 一般的には、 留学生はその相手国の文化や生活に対して、 徐々に親近感を示すようになり、 その国に対しても好意的になるものである。 しかし残念ながら、 日本に関しては、 このことも必ずしも当てはまらず、 暫くの間留学生であった人たちに強い反日感情が残っていることがある。 これは日本人の内なる非国際性を示す大きな欠陥である。


気づくべきは内なる国際化
近時密航の問題が取り上げられることが多いが、 この点についても、 日本は外国人労働者の受け入れに関し確固とした合理的な基準がない。 その一方で、 単純労働力の不足を補う密入国者に絡む社会問題は極めて多い。 こうしたことが、 日本および日本人に対する評価をいかに大きく貶めているかについては、 深い反省を要するところであろう。
経済大国になった日本が、 それにふさわしい影響力を国際社会で行使できないことの要因は、 交渉当事者たちの対外対応力の欠如というよりも、 むしろ日本社会に根強く残っている 「内なる国際化」 の欠如、 ひいては、 ひとりよがりの外国人排除的な発想ではなかろうか。
今、 緊要なことは、 国際化の波にさらされている日本が、 外向きの国際化だけでなく、 自己のアイデンティティーを保持しながら、 「内なる国際化」 をいかに国際水準にまで引き上げるかということであるように思う。

(1997年06月25日「基礎研マンスリー」)

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