1997年01月01日

改革元年

細見 卓

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前月号のこの欄で、経済活動を構成している計量とか物量とかの規格について、国内の規制緩和の機会に、世界的に一般化しているものに合致させようと提唱した。計測の不一致とか換算の混乱のために経済行為が無用に障害を受けないようにしたいためである。

こうした物量的な規格が世界的に統一されてくると、個々の国における商品やサービスについての価格のばらつきが一層目立ってくる。国内市場における物価は概ね一物一価の原則が貫徹しているけれども、国際的にはかなり不揃いな物価が横行している。今までは計量方法や規格の不一致のためにそうした不整合も曖昧なまま放置されてきた。しかし、日本における日常的商品の内外価格差の大きさは、生産性の格差をも反映し、とうてい無視できない大きさになっている。製造業の大量生産品は、円高にも耐えうる価格競争力を持っているが、日常生活品の小売り物価やサービス価格、さらには農産物については、かなり顕著な内外価格差が放置されたままである。もちろんこれら産品の生産性の向上や流通機構の合理化、サーピス効率の向上等は、年々進展はしているけれども、今なお内外価格差の存在、二重価格的不合理の存在は否定できない。つまり生活関連の物資はその低生産性を反映して外国に比べて価格が高く、自動車等の工業製品は外国のそれに比べ、生産性も高く、価格も割安である。別の言い方をすれば、日本の工場労働者は、生産性の高い製品を比較的安い価格で外へ売って、割高な消費物資やサービスの購入を余儀なくされている。つまりマクロ的に言えば、競争力が強いことによって獲得した外貨を使って、円高という交易条件の有利さで安く外国の物を買えるにも関わらず、そうなっていないわけである。

それでも今日までは日本経済の活力が強く、高成長を続けて新しい競争力ある産業が現出し続けたので、こうした不当に不利な交換条件の甘受ともいえる二重価格制の下でも、何とか黒字を続けることができた。しかしながら、新年度の経済見通しにみられるごとく、競争力の強い産業の開発によって、この不合理さを相殺するという可能性は著しく減退していくとみなければならない。つまり、日本経済の中に混在する劣弱な不合理なものを積極的に排除して、合理的な経済行動を指向しない限り、経済の破綻をも招かざるをえないと予想される。

今や世を挙げて規制緩和、構造改革、政治経済体制の抜本的組み替えが、残された窮境打開の策といわれている。しかしながら、その改革をいかなるプロセスでどのように実現していくかは、残念ながらまだその具体策が明らかにされていない。そこで、新年にあたり、思い切って構造改革の具体策のようなものを提示してみたい。

それは、規格の相違、品質検査の未完といった理由で玄関口で厳密な検査を受け、輸入が滞っているような外国製品について、思い切って2年とか3年とか期限をきって、外国の規制で認められている全ての製品を無検査で受け入れる。そして、2~3年の大胆な市場開放の結果、日本社会の市場に合わず、破壊的な影響を及ぼしたものについては、その実状に検討を加え、その輸入を抑えることがあるとしても、それは主として市場の規制と選択に任せる。官としては、まず全ての輸入規制を取り外してしまうことを提案したい。日本は別だという姿勢を止めよう。

日米安保の役割変更に伴い、日米間の国際関係が経済中心のものになっていくであろう。場合によっては、かなり激しい摩擦も予想されるとして、思い切った日米自由貿易協定の締結が必要だともいわれている。日米自由貿易協定には、制度としてはいろんな論議もあろうが、その前に、産品が自由に国境を越えて取引される関係を実験してみるべきである。それぐらいの大胆さがなければ、ますます経済色の強まる国際関係で、日本と周辺諸国との関係を良好に保つのは難しいのではないか。日本の市場の輸入選択は、一部の保護貿易主義者よりも賢明であるに違いなく、適当なバランスに到達するに違いない。

衆目のみるところ、先進国の中でも日本の貿易黒字額は巨額であり、その黒字も来年の経済の舵取り如何では増大する可能性もある。こうした中では、思い切って全ての規制を自由化して、その利害得失を検討するような大胆な透明さが必要ではないだろうか。買い物だけの海外旅行のようなものも不要となり、この措置による国際収支に与える影響も意外に小さいかもしれない。この際、改革元年として思い切った輸入改革策を提唱してみたい。

(1997年01月01日「調査月報」)

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