1996年09月01日

近年のわが国金融政策と今後の動向について-ニッセイ基礎研金利先行指数とインプリケーション

正地 信夫

高橋 智彦

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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<要旨>

  1. バブル崩壊後の景気低迷の中、91年7月以降、9回にわたり公定歩合が引き下げられ、短期金利の低め誘導も実施されるなど、未曾有の低金利となった。低金利は家計部門から企業部門や一部金融部門への所得移転をもたらしたが、他方で設備投資の回復、住宅投資の増加や株価の下支え、為替の円安などマクロ経済全般にはプラスの効果をもたらしている。
  2. 中期的には日本経済をめぐる諸課題として、趨勢的な円高とメガ・コンペティション下での産業構造調整問題、バブル崩壊の後遺症としての不良債権問題、財政再建問題などがあり、景気回復力が限られる中、低金利政策が続けられる可能性が高いとみられる。ただし、最近の景気は弱さを抱えながらも回復傾向が明確化してきており、デフレ懸念が強まる状況下で実施された昨年9月の緊急避難措置の修正時期が模索されている。
  3. このたび当研究所では各種の月次統計をもとに金融政策の趨勢的方向を予測できるニッセイ基礎研金利先行指数を開発した。金利先行指数は2種類あり、指数(I)はDI型、指数(II)は主成分分析に基づくインデックスであり、過去の金融政策の転換点(多段階にわたる利上げ局面への転換、多段階にわたる利下げ局面への転換)に対しておおむね先行するなど、実績パフォーマンスは良好なものとなっている。
  4. 直近の金利先行指数は景気全般の改善傾向などを映じてかなり強含んでいるが、過去の経験則からみると、「多段階にわたる利上げ局面に転換する」とのサインは現時点では出ていない。緊急避難措置の解除としての短期金利低め誘導の解除や公定歩合の小幅引き上げはあっても、利上げが繰り返されるほどの経済情勢にはないとみられる。

(1996年09月01日「調査月報」)

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(やじま やすひで)

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