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- テレワーク導入の社会的効果と留意点(Telework)
アメリカはテレワークの発祥地として、リーダー的存在であり続けているが、他の数多くの国でも、テレワークという新しい働き方が推進されている。例えば現在、アメリカ以外のテレワークに取り組んでいる代表的な国として、カナダ、イギリス、フランス、オランダ、スウェーデン、フィンランド、ドイツ、オーストリアやスペインなどが挙げられるほか、ブラジル、インド、シンガポール、オーストラリアやニュージーランドといった国々でもテレワークが活用されている例が多い。
そもそも、テレワークが話題を集め始めたのは1970年代に入ってからである。その主な背景として挙げられるのはオイルショックに起因するエネルギー問題で、通勤によるガソリンのいわば無駄使いを削減する手立てとして検討され始めた。その後1980年代には、パソコンの普及を始め通信技術の進歩および低価格化、女性による本格的な職場進出、そして深刻化する経済不況が、テレワークの導入に拍車をかける結果となった。さらに1990年代に入ってからは「仕事革命」とでもいうべきものが展開されつつあり、ダウンサイジングやリエンジニアリングのような組織構造の再編成の下で、弾力性が非常に高いテレワークが一段と注目され始めた。同時に、1989年のサンフランシスコ地震および1994年のロサンゼルス地震をきっかけに、テレワークが次第に重要な危機管理ツールとしても位置付けられるようになってきている。目下、アメリカにおけるテレワーカー(Teleworker)の数は700万人以上と推定される。
一方、日本におけるテレワーク、とりわけサテライトオフィス勤務のような仕組みは、この5年間、各方面からかなりの注目を浴びてきている。その背景としてまず挙げられるのは、東京への行き過ぎた集中およびバブル経済下の地価高騰やサラリーマンの通勤時間の長時間化などである。さらに、海外と同様、大気汚染や交通混雑のような環境問題、離れても仕事を可能にする通信技術の進歩、人口動向に伴う労働力の多様化、そして長引く経済不振などのファクターが起因しているといえよう。
このような背景を踏まえ、1980年代後半以降、日本でも一連のサテライトオフィス実験が行なわれ、バブル経済下の地価高騰対策やオフィスワークの生産性・創造性向上といった効果が検証された。1990年代に入ってからは、円高や製造拠点の海外移転などを受け、地域活性化を狙ったテレワークの地方展開の事例も現われ始め、今年の阪神大震災後、災害対応および危機管理の手段としての通信技術の役割がクローズアップされる中、やはり、テレワークを検討する動きが少しずつでてきている。
本稿ではまず、『テレワーク』を定義し、その主な利用形態を整理することとする。加えて、個人、企業および社会にとってのメリット・デメリットを検証した後、テレワークへの具体的な切りロとして阪神大震災のような非常時におけるテレワークの役割を考えてみることとする。
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