1995年03月01日

生産性主導の経済成長に戻った米国経済

ローレンス クライン

熊坂 有三

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1.今回と過去の景気回復の相違
2.生産性トレンドの改善V.S.生産性の循環的改善
3.インフラストラクチュアーの生産性、経済成長への影響
4.Two-Level C.E.S.生産関数の推定
5.結論:インフレ懸念にとりつかれた連銀

〔序〕

1991年の3月に始まった今回の米国経済の回復は次節で詳しくみるように幾つかの点で過去の経済回復と異なっている。特に、経済政策者にとって今回の景気回復の中で見られる米国経済の生産性の高い伸びが単に循環的なパターンを示しているだけなのか、あるいは生産性トレンドが上方にシフトしたのかを見分けることが重要である。連銀は経済の過熱化から将来のインフレを懸念し、1994年2月4日から11月15日の間に政策金利を6回も引き上げている。確かに1993年第4四半期から1994年の第3四半期の1年間の実質GDPの平均の年率成長率は4.3%と高いが、同時期のGDPのインプリシットデフレーターの平均の年率の伸びは2.2%にしかすぎない。にもかかわらず、連銀は年率2.5%と考えられているサステインナブルな成長率を促進するためにはインフレを事前に抑制することが必要と考えている。連銀のエコノミスト達は1990年代の米国経済の生産能力の拡大に楽観的であるようには思えない。またアラングリーンスパン連銀議長は1993年の夏の議会証言で、もしも中央銀行がエラーを犯すとすれば、それは引き締め強化のほうがよいと言っている。このことから、これまでの予防的引き締めは経済の停滞を急速に早めることになりかねない。

米国経済が1990年代に入り、生産性主導の経済成長の時代に再び入ったかを議論するために5つのセクションに分けて分析をおこなう。まず、第1のセクションでは今回の景気回復と過去の景気回復の相違を指摘する。第2のセクションにおいて今回の高い生産性の伸びが従来の生産性トレンドに戻る循環的なものでなく、生産性のトレンドの変化として捉えられることを示唆する。第3セクションではインフラストラクチュアーの生産性、経済成長への影響を考える。

第4セクションでは資本、労働、エネルギーを投入要素とするTwo-Level C.E.S.生産関数を推定し、ソロー残差をインフラストラクチュアーで説明し、米国経済の生産能力が今回の景気回復の中で1960年代初期のように急速に拡大していることを実証する。これに基づき、最後のセクションで我々は連銀が今回の景気回復の中でとった金融政策がインフレ懸念をあまりに過大視しすぎていることを懸念する。そして、我々は連銀がインフレを生じないサステインナプルな成長率として2.5%よりも高い成長率を目標とすることを提案する。

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