1994年11月01日

ドイツにおける民間社会福祉事業 -世界最古の民営福祉施設「フッゲライ」を訪ねて-

山本 実樹也

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■見出し

1.はじめに
2.広く薄いドイツの公的社会保障制度
3.地域に根ざしたドイツの民間福祉事業
4.世界最古の民営福祉施設「フッゲライ」
5.おわりにかえて(フッゲライ訪問記)

■introduction

「人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し、且つ保護することは全ての国家権力の義務である。」――ドイツ連邦共和国基本法(憲法)第1条の条文である。事実、ドイツはビスマルク(1880年代)以来、社会保障制度を整備してきた「社会保障先進国」であり、最近では世界初の公的介護保険制度の導入が決まり、このことは日本でも大きく報道されている。我々日本人が一般にイメージするドイツとは、このような近代的な社会保障制度により全ての国民に豊かな生活を保障している国であろう。

しかし、ドイツのような社会保障先進国でも、全ての社会的弱者を公的資金だけで救うことはできていない。残念ながら、この現実は高齢化社会の進展、政府の財政問題の深刻化を背景に、今後も大きくは改善が期待できない。

だが、ドイツにおける弱者、例えば老人の生活は我々日本人の目からみると比較的ゆとりがあるように見える。これはドイツでは、昔から、そして今も、教会・社会福祉団体・ボランティアなど地域に根ざした民間レベルのカが活躍しているためである。

民間レベルの社会福祉活動を語る際に、度々引き合いに出されるのが、南ドイツの都市アウグスブルグにある世界最古の民営福祉施設「フッゲライ」である。「フッゲライ」は、16世紀初頭に中世きっての大富豪として知られたフッガ一家が敬虔な信仰を持つ貧民を救済するために建設した低家賃住宅で、驚くべきことに、今も当時と変わらぬ家賃で大勢の高齢者に利用されている。

本稿では、ドイツにおける民間事業の社会福祉活動の現状について述べるとともに、民間社会福祉事業の好事例である「フッゲライ」にスポットをあて、その歴史や現在の運営方法を紹介したい。

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